若い団員の皆様に
木村晋介法律事務所 木村 晋介
1 集団的自衛権は賛成が57%
新しい安保法制によって導入された集団的自衛権について、憲法9条に反するか否かが大きな論争になりました。導入された集団的自衛権の条項には三つの要件がついていますが、最も大きな論点は、そのうちの、存立危機事態(日本と国民の息の根を止めるような明らかな事態)が起こった場合に、集団的自衛権が限定的に行使できる(時と場合によって助太刀ができる)とすることが合憲かという点であったと思います
この法案を通すということは、60年間続いてきた「集団的自衛権の行使は憲法改正しなければ認められない」という政府解釈を変更し、法改正で間に合わせたわけで、これが批判を受けたのは当然です。これを力で(といっても多数決ですが)導入したことに対する世論の批判が強く、団内では、倒閣まで行くのではないか、という論調までありました。しかし、少したってからの世論調査(読売)では賛成が反対を上回りました。その後にウクライナ戦争が起きていますので、賛否の差は大きくなっています(賛成57%)。
2 平和より安全保障が欲しい
どうしてこうなるのか。ということです。団は平和活動家の集まりでもあります。しかし、安全保障政策を考える人の集まりとはいえません。しかし、街の人々の多くは安全保障を求めています。ここに大きな食い違いがあります。その食い違いを少しでも埋めないと、平和運動は前に進まないでしょう。私はときどき団通信で団員の方と論争しますが、余り日本の安全保障をどうするか。という論旨には多く恵まれません。NATOがアメリカを盟主とする帝国主義的軍事同盟である、という論旨には恵まれます。帝国主義というレッテルは、レーニンがいい出したことで、NATOが侵略主義的な軍事同盟であるという主張を意味します。そして、ウクライナ戦争の原因はプーチンの「ウクライナのNATO化拒絶の再三の警告」を無視したゼレンスキーにあり、彼はその結果について国民に責任を負う、というのです(松島暁、団通信1782号など)。
西側原因説の総会議案書
その後には、戦争の原因は圧倒的に西側が作り出しているという総会の議案書が提出されます。私が理解するその論旨は、①アメリカはロシアを弱体化させる戦略を持っていた。②そのためにロシアに脅威を与え戦争へと追い込んだ。③アメリカは、自国民の血を流さずに、ウクライナ人の血を流させ、金だけ出して「夢のような戦争」をし、ロシアを弱体化させようとしている。④加害者はアメリカであり、ウクライナはその手先であり、被害者はロシアとウクライナ人である。というものです。おそらく執行部で議論したうえで提出されたものであるはずです。
ズレをうめよう
私は、これが団の多数意見とは思っていませんが、しかしこうした議案書が提出され、決して否決も撤回もされたわけではないことに大きな違和感を覚えます。おそらく、安全保障を求めている街の人々もそう感じるでしょう。この感覚で、街の人々に平和を訴えても、その運動に未来はありません。きっとうまくいかないでしょう。団の平和政策は街の人々に届くように練り直す必要があると思います。
若い方々にその道程を考えていただきたい。私は皆さんとともに、学んでいきたいと思います。ご意見がありましたらご連絡ください。042(480)9863