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新人紹介
人権擁護のために闘う弁護士でありたい

東京法律事務所 伊久間 勇星

弁護士になった動機
 私が弁護士なるものを初めて知ったのは、齢十のことである。孔子よりも五年も早く学を志していた私の知的好奇心は留まることを知らなかった。
 当時の学友達がモンスターをボールに入れたりハントしたりすることに熱中している中、ただ独り母上から賜った「逆転裁判」という知的電子遊戯に興じていたのである。
 この「逆転裁判」は、主人公の弁護士を操作し、無実の罪に問われている被告人を裁判で無罪にするというゲームである。当然ゲームとして作られただけあって、「異議あり!」を証人に向かって叫んだり、公判中に突如謎の証人が出てきたりと実際の裁判からは大分離れているのだが、依頼者の無実を信じて熱い心とクールなロジックで奮闘する主人公の弁護士の姿は幼心に強烈な印象を刻み付けた。
 漫画やゲームの影響を受けやすいことに定評のある伊久間少年は机をバンッバンッと叩いては渾身の「異議あり!」を繰り出すことに心血を注いでいた。勢いあまって勉強机を破壊して大目玉を食らったのも今ではいい思い出だ。そのため「異議あり!」の発声と机の叩き方は新人弁護士随一であるという自負があるが、生憎尋問未経験のため私の「異議あり!」も机叩きも陽の目を浴びたことは未だに無い。今後の活躍に乞うご期待である。
 さて、そうは言っても風もふきあへずうつろふのが人の心である。将来の進路は宇宙飛行士や財務官僚、地理の予備校講師から公安警察まで大いに揺れ動いた。
 最終的になぜ弁護士という進路に落ち着いたかは、青年法律家協会の月刊誌「青年法律家」第625号掲載の拙稿「人間合格」にて詳述しているので適宜参照されたい。

自由法曹団に入った動機
 身も蓋もないことをあえて書くと、入所した事務所が「そういうことになっていた」からである。「入った」というよりも「何かいつの間にか入っていた」という方が実感に即している。自由法曹団という名を冠する団体に自由なく加入したことについて思うところが無いと言えば嘘になる。
 この原稿にしてもそうである。厳格な締切日があり、字数も1200字~1500字に指定されている。一体全体どこに私の自由はあるのかと嘆きたくもなるが、締切を現在進行形で破っている私にはその資格が一切無いことが残念でならない。
 これ以上好き放題書くと流石に多方面からお叱りの言葉を頂戴しそうなので最後に真面目なことを書くこととする。
 いわゆる四大法律事務所のアソシエイトになるのか人権問題・社会問題に取り組む弁護士になるのかという分岐点に立たされた当時大学4年生の私を後者へと決定づけたのが弊所の大先輩加藤健次先生の「堀越事件学習会」だ。
 単純に判例百選に掲載されている有名事件だから実際に弁護をした人の話を聞いてみたいという興味から参加した勉強会だったが、捜査機関による強権的な弾圧の実態・事件の思想的政治的背景・理不尽な第一審判決から逆転するに至るまでの弁護団の奮闘のドラマといった内容は、それまで無味乾燥な知識でしかなかった判例の彩りを思いがけず豊かにしてくれた。
 人権の砦となる判例の裏側には、幼心に憧れた、熱い心とクールなロジックで奮闘する弁護士達が確かにいたのだ。
 現代社会には、ひろゆきらによる辺野古新基地建設反対運動に対する冷笑活動や先日最高裁判決の出たDHCテレビによる差別番組事件など人権というものを忌避する風潮が一部に根強く存在している。
 一方で、多くの統計にて同性婚や選択的夫婦別姓を大多数の人々が支持していることが明らかになっており、必ずしも社会全体に絶望しなくてもいいのではないか。
 私も自由法曹団の先輩弁護士のように、人権擁護のために闘う弁護士でありたいと強く思う。


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