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新人紹介

弁護士法人・響 古藤 由佳

 私が弁護士を志したきっかけは、ある判例を読んだことです。
 高校時代までの私は、法律の世界に対して何となく冷たいイメージを持っていました。テレビや新聞で有名事件の判決が報道され、一般的な国民感情と裁判所の感覚が乖離している、等という意見を聞く機会があったためかもしれませんが、どんなに苦しみを訴えても、冷静に突っぱねられてしまうような印象があったのを覚えています。
 しかしながら、ある時、法律が社会に与える影響の大きさに驚かされる出来事がありました。平成18年頃、飲酒運転で幼児が死亡するなどの痛ましい事件が多くあり、社会的に飲酒運転の厳罰化を求める声が多く上がっていました。その声を受けて、平成19年、道路交通法の改正により飲酒運転に対する罰則が厳罰化されると、その直後に飲酒運転の発生件数が目に見えて激減したのです。法律が社会に与える影響力の大きさに驚くとともに、法律が自分の生活にも深く関わるものであることを実感しました。
 その後、大学では開発学を学んでいたため、日本の法律に触れる機会はありませんでしたが、大学の卒論作成のために文献調査を行う過程で、ある判例と出会いました。
 私は、卒論のテーマとして代理母制度を日本に導入することの是非を検討し、その中で、生殖補助医療に関する判例・裁判例の調査を行っていました。その中に、保存された男性の精子を用いて、その男性の死後に人工生殖により女性が懐胎し出産した子について、その子がその男性の子であることについて死後認知を求める訴訟(最判平成18年9月4日。民集60巻7号2563頁)がありました。この訴訟は、最終的には請求棄却という結論に至るものの、裁判官が、補足意見等の中で、子の福祉という観点のみならず、父親を亡くした子どもの思い、夫を亡くした妻の思いにも深い配慮を示していました。このことに私は大変感激し、「ひとつ判決を出すためにこんなにも悩みを見せてくれるのか。」と感じたのを今でも覚えています。
 このようにして、当初、冷たく感じていた法律が誰かに寄り添うためにあることを感じて、法律の世界に興味を持つにいたりました。そして私も、自分の大切な家族や友人のように身近な人が困ったときに力になりたい、寄り添える存在でありたい、と考えて、実務家、特に弁護士を志しました。
 私が自由法曹団に入団したのは、現在所属する弁護士法人・響に入所したことがきっかけですが、自由法曹団の総会や勉強会は、様々な人権問題に気づかされる大変良い機会になっています。
 現在、日々の業務の中でたくさんのご依頼者様からご相談をお受けしますが、事件の見通しを立てるときには、どうしても類似事件の判例・裁判例の結論に引っ張られてしまいます。しかし、自由法曹団で諸先輩方の体験談を伺うと、「目の前の人を救わなければならない」という思いから、前例のないところに道を切り開いていくことこそが弁護士の職責であると感じさせられます。
 道なきところを切り開くための想像力は、多様な意見や価値観に触れることで養われるものだと思います。これからも、様々な立場の方に寄り添うことができるよう、多くの先生方のご意見に触れながら感覚を磨いていきたいと思います。


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