イスラエル政府および米政府のイランへの国際法違反の武力行使に対し強く抗議し、日本政府に武力行使に反対するよう求める支部長声明
2026年3月6日
自由法曹団東京支部
支部長 滝沢 香
1 2026年2月28日、イスラエル・アメリカ両政府は、イランに対して大規模な軍事攻撃を開始した。この攻撃によりイランの最高指導者ハメネイ氏が殺害され、小学校等への空爆により子供を含め多数の民間人の命が失われ、現在も犠牲者の数は増え続けている。
2 トランプ大統領は、イランは「世界第一のテロ支援国家」であり、核兵器を持つことによりイランの政権が強化され「アメリカや我々の国家安全保障上の核心的利益を脅かすのを阻止する」ため、「大規模かつ継続的な作戦を展開する」のだと述べ、先制攻撃を正当化しようとしている。
しかし、国連憲章は、武力による威嚇及び武力の行使原則として禁止しており(2条4項)、例外的に武力行使が認められるのは、他国による武力攻撃に対する自衛権の発動(国連憲章51条)、及び国連安全保障理事会の決定に基づく軍事的強制措置(国連憲章42条)の場合のみである。イランは核開発をめぐる米国との政府高官協議に参加し交渉継続を意思表示していたのであり、今回のイスラエル・米両政府が行った軍事攻撃は上記の例外に該当しないことは明白である。
非軍事施設や民間人への攻撃は、国際人道法にも反する。国連憲章と国際法に反する違法な軍事力の行使に対し、自由法曹団東京支部として断固たる抗議の意思を表明する。
トランプ大統領は、米軍などの攻撃終了後にイランの「政府を掌握せよ」などと呼びかけている。もしイスラエル・米両政府が武力行使によりイランの主権と政治的独立を犯そうとするのであれば、それは「侵略」(1974年12月国連総会決議)に該当する。いかなる政治体制であれ、独立した主権国家の政権を外部からの武力攻撃で転覆することは許されない。
3 イスラエル・米両政府のイランに対する武力行使に対し、高市首相は国連憲章と国際法に違反する旨の指摘さえしようとしない。小泉防衛大臣は、記者会見で記者の質問に対して、武力行使を政府全体として支持すると述べている。
日本政府は、長年にわたって、「法の支配」を重視し、「力による支配を許さず、全ての国が国際法を誠実に遵守しなければならず、力又は威圧による一方的な現状変更の試みは決して認められてはならない」(外交青書2025)と表明してきた。これは憲法9条を有する平和国家として当然のことである。にもかかわらず、イスラエル・米両政府による明確な国連憲章・国際法違反の武力行使を批判しないことは、「法の支配」が口先だけのものであることを告白するものであり、ロシアのウクライナ侵攻や中国の東南アジアに対する覇権主義的行為を批判する根拠をも自ら掘り崩す、恥ずべき姿勢である。
日本政府は、イスラエルと米国に対して国連憲章・国際法違反の武力行使を直ちに中止するよう強く求めるべきである。
現在、米国は日本に対してGDP比5%の防衛費を計上するよう求め、さらなる軍拡を強要しようとしている。月内には高市首相が訪米する予定であり、改めて防衛費の増額を求められる可能性が高い。
しかし、米国が国連憲章違反の軍事行為を繰り返している今日、米国の要求に唯々諾々と応じることは、我が国が米国と一体となって国連憲章・国際法違反の武力行使・戦争に巻き込まれる可能性を高めるものであり、断固として反対する。
4 国連グテーレス事務総長は、声明で「アメリカとイスラエルによるイランへの武力行使、そしてその後のイランの報復は国際の平和及び安全を損なう」とし、「敵対行為の即時停止と緊張緩和を求め」ている。国連安全保障理事会の理事国を含む多数の国家や各国の市民から、攻撃と報復のエスカレーションを懸念し、「全ての当事者に国際法および国連憲章の原則に従った平和的解決を得るための交渉に戻ることを呼びかける」(シンガポール外務省報道官)声が挙がっている。
自由法曹団東京支部は日本政府に対し、米国の軍拡要求とトランプ大統領の「力による現状変更」路線をきっぱりと拒み、国際社会の平和と秩序を武力ではなく外交によって維持するため紛争当事者および関係各国に働きかける外交的努力に全力を尽くすよう強く求める。これは、国連憲章よりも更に一歩進んだ平和な国際秩序を希求する憲法9条を規定する日本国憲法を有する、我が国の責務である。
以上