自由法曹団 東京支部
 
 
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団支部の活動紹介

改めてイスラエル軍のガザ地区及びヨルダン川西岸地区から
即時完全撤退とガザ地区の封鎖解除を求める決議

 2023年10月7日に行われたイスラム抵抗運動(ハマース)による「攻撃」を口実にしたイスラエル軍の大規模攻撃から1年3カ月が経過した2025年1月19日、カタール、エジプト、アメリカの仲介により、イスラエルとハマースの間の停戦合意が成立した。直近の同年2月15日には停戦合意後6回目となるイスラエルとハマースの間の身柄交換が履行されており、引き続き停戦合意が継続されることも確認されている。パレスチナ保健省の発表によれば2025年1月7日の時点でガザ地区の死者は4万5000人を超えていたとされており、実際の死者数はそれをさらに上回るとも言われている。この甚大な被害の継続と拡大を食い止めた停戦合意を歓迎したい。
 しかし、この停戦合意でパレスチナをめぐる問題が解決したわけではない。
 今回の悲惨な事態は、ハマースによる攻撃が原因であるかのような報道が散見されるが、それは正しい理解ではない。今から75年前にイスラエルが建国された際、およそ70万人のパレスチナ人が土地を追われて難民となったこと、その後4度にわたる中東戦争があり、1967年の第三次中東戦争以降イスラエルがガザ地区及びヨルダン川西岸地区の占領をしていること、イスラエルの占領に対する抵抗運動の中でハマース(イスラム抵抗運動)が生まれたこと、約30年前のイスラエルとパレスチナの和平プロセスが頓挫してしまったこと、その後ハマースが勢力を拡大し、パレスチナ立法評議会選挙で正当に勝利したにもかかわらず国際的に承認されず、ガザ内戦に勝利したハマースがガザ地区を統治するようになると、イスラエルがガザ地区を封鎖し、人的・物的交流が自由にできないだけでなく、インフラ整備すらままならない劣悪な「天井のない監獄」と評される非人道的状態がつくりだされたこと、これらの歴史的事実が積み重なって現在の悲劇が生み出されたのである。第三次中東戦争以降のイスラエルによるガザ地区とヨルダン川西岸地区の占領は明らかに国際法に反する違法なものであり、この問題の解消なくしてパレスチナの問題解決は図れない。イスラエルは、パレスチナの恒久和平実現の前提として、直ちに、無条件で、イスラエル軍をガザ地区及びヨルダン川西岸地区から撤退させるとともに、ガザ地区の封鎖を解除すべきである。
 現在、ガザ地区では、戦闘行為が停止されているとはいえ、これまでのイスラエル軍による攻撃により、インフラ設備、保健医療施設(病院や診療所や保健所等)の大半が崩壊しており、一般市民の生活の復興の見通しはたっていない。また、アメリカのトランプ大統領は、ネタニヤフ・イスラエル首相との会談の中で、イスラエルのジェノサイドによって破壊されたガザ地区からパレスチナ人を強制移住させ、米国が所有して開発をするかのような発言をしている。パレスチナの混乱は未だ続いており、復興には程遠い。パレスチナをめぐる問題の解決はこれからが正念場である。そこにおいて最も重視されるべきは、ガザ地区、ヨルダン川西岸地区に居住をしていたパレスチナの人々の生活と権利の回復である。
 自由法曹団東京支部は、2024年2月22日、イスラエル軍によるジェノサイドに強く抗議し、「パレスチナ・ガザ地区における集団殺害(ジェノサイド)の即時停止、及び、イスラエル軍のガザ地区から即時撤退、ガザ地区の封鎖解除を求める決議」をあげているが、今回の停戦合意を受け、改めてイスラエルに対し、直ちに、無条件で、イスラエル軍をガザ地区から撤退させるとともに、ガザ地区の封鎖の解除、そして恒久的停戦によりパレスチナ人のガザ地区での生命、身体、財産、そして居住の権利その他国際法上の等しく人間に認められる当然の権利すべてを保障・尊重するよう求め、ここに決議する。

2025年2月22日
自由法曹団東京支部 第53回総会
 
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