自由法曹団 東京支部
 
 
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団支部の活動紹介

国連女性差別撤廃委員会に対する拠出金停止等に抗議し、女性差別の撤廃を目指す決議

1 2025年1月27日、日本政府は、@国連人権高等弁務官事務所に対して拠出してきた任意拠出金の使途から、女性差別撤廃委員会(以下、「CEDAW」と言う。)を除外すること、A本年度に実施が予定されていたCEDAW委員の訪日プログラムの実施を見合わせることを、CEDAWに伝達した(同月29日外務省報道官記者会見。以下「本件措置」と言う。)。
2 CEDAWは2024年、8年ぶりに日本政府審査を実施し、同年10月に最終見解を公表した。その内容には、選択的夫婦別姓の導入、女性の司法アクセスの確保、賃金や教育機会のジェンダー格差解消、政治の代表や職場の管理職における女性割合の目標を同数とすべきことが勧告される等、幅広い内容が含まれている。併せてCEDAWは、男女平等を確保するために他国が王位継承法を改正した例に触れつつ、皇位継承における女性と男性の平等を保障するために皇室典範を改正するよう勧告した。
 外務省によると本件措置は、皇室典範改正が勧告されたことに対する抗議として行われた。外務省は、皇位につく資格は基本的人権に含まれていないことから、皇位継承資格が男系男子に限定されていることは女性差別にあたらない等と主張している。
3 女性差別撤廃委員会が皇位継承に関して日本政府と異なる見解を発表したことを理由に報復的措置をとることは、日本政府が、上記の幅広い問題を含む女性差別撤廃というイシュー全体を軽視する姿勢を示したものというほかなく、許されない。またCEDAW委員の訪日プログラムは、委員を日本に招聘し、国内の関係当局との意見交換や大学等の教育機関における講演活動の実施等が内容であり、同プログラム自体が日本国内における女性差別撤廃に寄与するものであったと言える。上記からすると、本件措置は、日本政府が女性差別の撤廃をないがしろにする姿勢を国際社会に示したものと言うほかなく、断じて許されない。
 加えてCEDAWは、女性差別撤廃条約17条に基づき、締約国の条約実施状況を検討するために設置された委員会であるところ、1985年に同条約を批准した日本政府は、同条約の実現のためにすべての必要な措置をとることが義務付けられている(24条)。本件措置は、これに反することを正面から言明したものと言え、条約批准国としても許されない。
4 自由法曹団東京支部は、女性差別を含むあらゆる差別を許さない立場及び国際協調主義の観点から、日本政府による本件措置に抗議し、これをただちに撤回するよう求めるとともに、女性差別の撤廃に向けた幅広い施策を採るよう求めて、ここに決議する。

2025年2月22日
自由法曹団東京支部 第53回総会
 
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