自由法曹団 東京支部
 
 
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団支部の活動紹介

憲法の明文改憲、及び実質的改憲の阻止のために行動する決議

1 行き過ぎた軍事費増加
 岸田政権は、2022年12月にいわゆる安保三文書を閣議決定し、アメリカの世界戦略に沿って、台湾有事を想定して南西諸島を中心にミサイル網を配備するなどし、日米共同で中国包囲網を敷く姿勢を明確にした。これ以来、政府はその具体化に突き進んできた。2023年から27年の5年間で43兆円の軍事予算を組むことが明らかにされ、物価高による国民の生活苦をわき目に、毎年軍事費は増加の一途をたどっている。
 さらに、岸田政権を引き継いだ石破政権は、この方針を堅持するばかりか拡大しようとしている。本年2月7日の日米首脳会談に際しての日米共同宣言においては、2027年より後も抜本的に防衛力を強化していくことが含まれており、安保三文書をも上回る軍事費の増加をアメリカに対して約束したと言える。
 軍事費増加のほかにも、日米統合軍司令部創設をはじめとした日米同盟の強化、南西諸島の軍事要塞化、経済安保法や軍需産業支援法の制定による経済活動に関する統制の強化と軍事産業を育成する動きなど、自公政権は、多岐にわたって戦争する国づくりの具体化を行ってきた。
2 能動的サイバー防御法案の危険性
 特に警戒すべきは、本年2月7日に通常国会に提出された「能動的サイバー防御」法案(サイバー対処能力強化法及び同整備法)である。これまではサイバー攻撃に対抗するシステムの強靭化が強調されていたが、能動的サイバー防御では、官民一体で情報を共有するとともに、通信事業者の情報も活用して攻撃者を検知し、攻撃者のサーバー等にも侵入し無害化するものである。
 基幹インフラ事業者がサイバー攻撃を受けたり、その予兆情報を認知したときには、政府への報告を義務付けるなど官民の連携を強め、セキュリティクリアランス制度を活用して情報共有を強化し、関係者への身辺調査が徹底されることとなる。また、通常時から政府が通信情報を収集・分析することが必要であるとして外国関連の通信情報を対象として、発信者と受信者の同意なくして電気通信事業者から政府にメールを提出させる。プライバシーと通信の秘密を侵害する内容である。
 また、被害発生のおそれを認知し次第、事前の被害防止を図るために相手のコンピュータやサーバーにアクセスして「無害化措置」を図るとされているが、その内容は一方的にプログラム等を消去、変更し、その機能を停止・破壊することが考えられる。これを実施するのは警察や自衛隊が考えられており、無害化措置によって相手国の軍事拠点や生活上の基幹インフラに打撃を加えることとなれば、これが相手国への先制攻撃となってしまう危険性をはらむものである。
 このように「能動的サイバー防御」法案は、憲法が保障するプライバシー権や通信の秘密を侵害し、平和主義とも相いれないものであり、日本国憲法を実質的に変容させる動きの一つと言えるのであって、成立させてはならない。
3 明文改憲の策動
 明文改憲について、改憲勢力は、衆議院憲法審査会の審理を通じて具体的な条文起草作業に入ることを提案し十分な議論のないまま改憲ありきで前に進もうとしている。昨年の衆議院総選挙による自民党の大敗により、改憲勢力が国会において3分の2を占める状況が解消され、危機的状況は回避されたかに見える。しかしながら、改憲勢力の動きには引き続き注視し立憲野党を後押しするように努力しなければならない。
 とりわけ、昨今の選挙において、インターネット上の言論(しばしば真偽不明の言説を含む)、広告やアルゴリズムが大きく結果に影響したとされていることに留意が必要である。憲法改正発議後の国民投票においても同様の事態が起こることが想定されなければならず、これらへの対応策について慎重な議論がなされないまま条文案起草作業が進むような事態は、あってはならない。 4 自由法曹団東京支部は、自公政権が行っている軍事力の肥大化等、日本国憲法の平和主義に反する取り組みに断固反対するとともに、明文改憲の策動を阻止するため、全力を挙げることを宣言し、ここに決議する。

2025年2月22日
自由法曹団東京支部 第53回総会
 
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