自由法曹団 東京支部
 
 
トップページ 支部の意見書・声明 2024年

団支部の活動紹介

袴田さんの無罪判決を受けて、控訴断念と再審法改正の早期実現を求める決議

 本日、静岡地方裁判所(國井恒志裁判長)は、袴田巌さんの再審事件につき無罪判決を言い渡した。
 本判決は、争点となった「5点の衣類」に関し「赤みが残るとは認められない」とした上で、「捜査機関によって血痕を付けるなどの加工がされねつ造されたもの」と認定し、袴田さんが本件を自白した検察官調書についても「黙秘権を実質的に侵害し、虚偽自白を誘発するおそれの極めて高い状況下で、捜査機関の連携により、肉体的・精神的苦痛を与えて供述を強制する非人道的な取り調べによって獲得されていて、実質的にねつ造されたものと認められる」とした。捜査機関の証拠の「三つのねつ造」を明快に断罪した判決であり、袴田さんの無辜は名実共に明らかにされたというべきである。
 これに対し検察側は、この再審公判でも「5点の衣類」をはじめとして再審請求審で決着済みの問題を蒸し返し、改めて有罪立証を行って死刑を求刑しており、この期に及んで再審無罪を言い渡した本判決に対して控訴をする可能性も否定できない。
 しかし、事件発生からすでに58年が経過し、死刑確定からは44年が経過している。袴田さんは、長期にわたり死刑囚として身体を拘束されたことによって拘禁反応の症状が見られるなど、心身に不調を来している。人生のほとんどを冤罪とのたたかいに費やすことを強いられた袴田さんの救済がこれ以上遅れることがあってはならない。検察は控訴を断念すべきである。
 また、これほどまでに袴田さんの救済が遅れたのは、そもそも再審手続の法整備が不十分である点が挙げられる。再審手続において検察官手持ち証拠に対する証拠開示請求が認められていれば、もっと早く捜査機関の証拠のねつ造の事実を明らかにできたはずである。また、袴田さんの2014年3月27日の最初の再審開始決定(静岡地裁)から10年以上経過している。本件の審理がこれほど長期化したのは、検察側に再審開始決定に対する上訴権を認めていることが大きく影響している。無辜の処罰は絶対にあってはならない。えん罪被害者の早期救済のためにも、再審法制の改正は喫緊の課題である。
 袴田さんの一刻も早い完全救済と、袴田さんのようなえん罪被害者を2度と生み出さないようにするため、証拠開示請求手続の明確化、検察官上訴の禁止などを謳った再審法改正が早期に実現されるべきである。
 自由法曹団東京支部は、袴田巌さんに下された無罪判決を歓迎する。そして検察に対して無罪判決に対する控訴を断念し、早期に袴田さんの完全な救済を実現させるよう求めるとともに、国会に対しては、一刻も早い再審法改正の実現を求めて、ここに決議する。

2024年9月26日
自由法曹団東京支部 幹事会
 
自由法曹団東京支部 〒112-0014 東京都文京区関口一丁目8-6 メゾン文京関口U202号 TEL:03-5227-8255 FAX:03-5227-8257