「裏金」問題をはじめとする政治腐敗を糾弾しその即時かつ恒久的な根絶を求める決議

　しんぶん赤旗による報道をきっかけに白日の下に晒された自民党派閥「裏金」問題は、東京地検特捜部による関係者の任意聴取や派閥関係先の家宅捜索、関与者や関与議員の逮捕等に至ったものの、その全容は現在に至るまで解明されていない。自民党は、各議員に「裏金」に係るアンケートを行ったとのことだが、その内容は五年間の収支報告書の「記載漏れ」の有無と、記載漏れがあった場合の金額を尋ねる二問のみとの報道があり、全容解明に向けて真摯な取り組みが行われているとは到底言い難い。
　本問題は、自民党派閥主催の政治資金パーティー開催に関しての収入のうちの一部について、政治資金規正法（以下「規正法」という。）上記載が義務付けられている政治資金収支報告書に記載をせず、その使途等が明らかにされないいわゆる「裏金」として議員側が得ていたとのものである。
　上記問題が規正法に違反する可能性が極めて高いことは言うまでもない。そして規正法は、そうした問題を抑止する有効な手段とは必ずしもなっておらず、今後も同様のことが繰り返されてしまう恐れもまた極めて高いものといわざるを得ない。国民一般に広く公開される政治資金収支報告書に記載のない金、すなわち「裏金」は、その使途についても国民の監視がまったく及ばず、違法な金員の授受の原資ともなり得、我が国の政治腐敗を拡大させる火種となるものである。
　そもそも、これまでも我が国の政界においては、「裏金」問題をはじめとする政治資金規正法違反事件は枚挙に暇がなく、古くはいわゆる金丸事件や西松建設事件、陸山会事件、近年でも、小渕優子後援会事件、桜を見る会問題、薗浦健太郎事件など、同様の問題が繰り返し生じている。こうした問題が生じるたびに抜本的な問題解消の機運が一時的に高まるものの、結局は再発防止のための対策が取られることもなく、時を措いてまた同じような問題が発生し続けている。こうした問題が繰り返されることにより国民の政治に対する不信は際限のないものとなり、そして政治参加への機運も低下の一途を辿ることとなる。これは、我が国の今後の未来を考えるうえであってはならない由々しき事態であろう。
　また、仮に「裏金」を政治資金と扱わないのであれば、それは当然課税対象となるべきであり、当該金員に対する納税をしないのであればそれが脱税であることは明らかである。東京地検特捜部は、本問題があくまで上記政治資金規正法違反事件であるとのみ捉え、その枠内で捜査を行っている。しかしながら、本問題は、上記のとおり脱税問題をも包摂するものなのであり、この点について何ら捜査を行わないのは、特捜部の怠慢というほかない。既に市民団体において「裏金」について脱税があったものとして東京地検に告発を行う動きもあり、特捜部はそうした動きを真摯に受け止めて、本問題の核心の一つである脱税問題についても徹底した捜査を行うべきである。
　自由法曹団東京支部は、我が国の政界に蔓延する政治腐敗を改めて強く糾弾するとともに、検察に対し、本件「裏金」問題の徹底的な真相究明、特に政治資金規正法違反の側面のみならず、脱税の側面についても捜査を貫徹することを求める。また、政府自民党に対し、各議員の裏金の使途について根拠とともに明らかにさせるとともに、先の問題が生じる根源の一つである企業・団体献金の全面禁止を含めた問題の抜本的解決を図る法改正の実現をするように強く求める。加えて、政治腐敗の監視、是正に向けて志を同じくする各民主団体と引き続き連携し、先の企業・団体献金禁止を含めた規正法の改正をはじめとする政治腐敗の即時かつ恒久的な根絶のためのあらゆる施策実現の為、今後とも行動を続けていくものである。

2024年2月23日
自由法曹団東京支部総会