自由法曹団 東京支部
 
 
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団支部の活動紹介

関東大震災の虐殺事件の歴史を忘れず、歴史修正主義との闘い、ヘイトスピーチ・ヘイトクライムへの取り組みを進めていくことの決議

 関東大震災から100年を迎える。首都圏を襲った唯一の巨大地震による死者は約10万5千人とされており、甚大な被害が発生した。震災直後、朝鮮人が井戸に毒を入れたなどのうわさが広まり、何の罪もない多くの朝鮮人が住民による「自警団」や警察等に虐殺された。その犠牲者は震災による死者の1〜数%に及ぶと言われている。
 100年を経た今もヘイトスピーチ、ヘイトクライムは私たちの社会からなくなってはいない。川崎市の多文化交流施設「川崎市ふれあい館」への殺害や爆破の脅迫、韓国民団愛知県本部、名古屋韓国学校、京都府宇治市のウトロ地区(在日コリアン集住地区)の民家等への連続放火事件、コリア国際学園への放火事件、JR赤羽駅で「朝鮮人コロス会」との差別落書、Jアラート(全国瞬時警報システム)発出を契機とする朝鮮学校に対する暴行脅迫事件などが発生し、インターネット上には、在日コリアンや朝鮮学校に対するヘイトスピーチが溢れている。
 本来であれば、このような被害をなくすために社会全体で取り組まなければいけないはずであるが、東京都政はこれに逆行している動きをしていると言わざるを得ない。毎年9月1日に墨田区・横網町公園で催される関東大震災で虐殺された朝鮮人犠牲者の追悼式典へは、石原都知事を含め都知事の追悼文が送られてきたが、小池百合子東京都知事は、就任2年目の2017年からを追悼文を拒否し続け、「民族的な差別意識などで虐殺された人は自然災害の犠牲者とひとくくりにせず、二度と同じ過ちを繰り返さない姿勢を示してほしい」との声に応えようとしない。このような都知事の対応は、歴史的研究・知見の積み上げに基づいて証明されてきた歴史を否定して朝鮮人虐殺がなかったとする歴史修正主義を助長するものと言わざるを得ない。
 虐殺は1923年に突然起こったのではなく、日本の朝鮮侵略、植民地支配というその脈絡の中で関東大震災時の朝鮮人虐殺も考えなければならない。虐殺の根本原因となった朝鮮侵略、植民地支配の責任の視点を持つことが重要である。その意識を持つことにより歴史の教訓を現在及び未来に生かすことができるのである。
 自由法曹団東京支部は、歴史歪曲の動きも見える中、虐殺事件の歴史を忘れず、100年の節目に立って、今後も歴史修正主義との闘い、ヘイトスピーチ・ヘイトクライムへの取り組みを進めていくことを決議する。

2023年2月24日
自由法曹団東京支部総会
 
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