自由法曹団 東京支部
 
 
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団支部の活動紹介

英語スピーキングテストの都立高校入試への活用について抜本的な見直しを求める決議

 東京都は2022年11月27日に都内全公立中学3年生を対象に英語スピーキングテスト(ESAT―J)を強行した。英語スピーキングテストの成績を都立高校の入試に加算することについては、0〜100点までの点数を6段階に分けて換算するため1点の違いしかないのに換算点では4点も違った点が付けられる不公平な結果となること、受験できたのは、都内公立中学校の子どもたちだけで国立・私立中学・都外中学の子どもは受験できないため不受験者は入試の英語学力検査(筆記試験)の得点から仮の結果を推定して加算することと、採点方法が公開されておらず、国外で行われた採点を検証する手段がないこと、スピーキングテストは民間業者であるベネッセが作成し、そのESAT―Jと酷似するGTECCoreというテストを同社が実施していることから同社の教材を使った授業を学校外で受ける者が有利となること等から、生徒や保護者、教師、専門家から実施反対の声が多く上がっていた。
 都議会超党派でつくる入試活用の中止を求める議員連盟議員連盟などがスピーキングテスト後に実施したアンケートでは、待機していた部屋で解答する声が聞こえてきた、防音具のイヤーマフ越しに他の受験者の解答音声が聞こえた、録音確認の際に周りの人の声が録音されていたなど通常の入試では考えられない状況が浮かび上がった。
 このようなテストの結果を都立高校入試に活用できないことは明らかである。
 2022年12月都議会では、テストの実施状況の早急な報告を求める都民の声を無視して、都教委は年内の議会での報告を拒否し、その後の保護者や専門家の強い要求を受け、文教委員会で報告するに至った。
 民間試験や民間事業者の試験活用の問題点は、大学入試改革も含め専門家や都民、国民がずっと指摘してきたところであるが、都教委はそれらに耳を傾けずに強行したことが、そもそもの失敗の最大要因といえる。
 最初にプレテストが行われた2019年度予算議会の時も、テストを実施するのが民間事業者だということを明らかにせず、その後テストを運営するベネッセと協定を結んだ時も議会に報告はなかった。スピーキングテストは、民主的手続を踏まえずに導入を決めたという経緯があり、かかる経緯からも高校入試にスピーキングテストを活用することに相当の問題があったといえる。
 以上のように多くの問題点が明らかになったスピーキングテストの活用は、平等な高校入試の実現に弊害を生じさせていることは明らかである。
 それにもかかわらず、東京都教育委員会は、今年度の都立高校の合否判定に活用するばかりか、来年度、1年生と2年生にも実施することを表明しており、東京都教育委員会はスピーキングテストの問題点を改めて整理・検討し、スピーキングテストの都立高校への活用の中止を中止すべきである。
 自由法曹団東京支部は、東京都に対し、英語スピーキングテストの問題点を精査し、スピーキングテスト実施の強行姿勢を改め、都立高校入試への活用の中止を含め、抜本的な見直しをするように強く求める。

2023年2月24日
自由法曹団東京支部総会
 
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