自由法曹団 東京支部
 
 
トップページ 支部の意見書・声明 2023年

団支部の活動紹介

敵基地攻撃能力の保有に反対し、安保法制廃止に取り組む決議

 岸田政権は、昨年2022年12月16日に国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画など安全保障関連3文書に関して閣議決定した。
 その内容は、反撃能力という名目で敵基地攻撃能力の保有を明記するものである。
 国家防衛戦略では、「日米両国は、その戦略を統合させ(中略)共同の能力を強化する」「我が国の防衛力の抜本的強化は、(中略)日米同盟の抑止力・対処力を一層強化するものとなる」との記述もある。「防衛力抜本強化」で重視する事項とは、スタンド・オフ防衛能力(長距離のミサイル配備)、統合防空ミサイル防衛能力、無人アセット防衛能力、領空横断作戦能力(宇宙、サイバー、電磁波)、指揮統制・情報関連機能・起動展開能力・国民保護など多岐に及ぶ。政府の決定には、中国を唯一の競争相手と位置づけ対抗していく姿勢から、「台湾有事」を念頭に同盟国との統合・多国間指揮統制の実現、つまりアメリカの指揮下に同盟国の軍隊を組み込んで統合して戦うといったアメリカの構想が背景にあり、日本をアメリカの戦争に巻き込ませる本質を備えている。
 政府は、国会答弁などで専守防衛という従来の日本の防衛政策の変更はないと答弁しているが、長距離のミサイル配備をはじめ、相手国を攻撃する能力を備えるなどの内容は到底専守防衛とは評価できず、政府は憲法9条の理念である平和主義の姿勢に立ち返り直ちに改定された安保3文書を撤回するべきである。
 振り返れば、自民党政権は、2014年7月1日の閣議決定により、憲法9条の解釈を変更し集団的自衛権の行使を容認した。翌年、安全保障関連法を成立させ、集団的自衛権を容認する法案を国民が大きな反対の声を上げる中で強行採決した。
 今回の安保3文書改定もこうした憲法9条の平和主義を破壊する政府の行動の中で、生まれたもので、強い非難に値するものである。
 政府は今回の安保3文書の改訂により今後5年間で防衛費に総額43兆円を投入すると表明している。この防衛費の投入は日本を軍事大国に作り替えるものであって、憲法前文、9条、41条など重大な憲法違反である。
 政府は、安保3文書の中で敵基地攻撃能力について「武力攻撃が発生していない段階」で行使することはないとしている。他方で、政府は「武力攻撃が発生した場合」とは「相手国が武力攻撃に着手したとき」であるとしており、実際に相手国からの攻撃がなされる前の段階から敵基地攻撃能力を行使することが可能になっている。また、何をもって「着手」とするかについては、何ら判断基準が示されておらず、また、その正確な認定は困難であるから、敵基地攻撃能力の行使は、憲法にも国際法にも違反する先制攻撃となりかねない危険性を有している。さらに、安保3文書では、その攻撃目標も明示されてはいないため、相手国の領域における拠点や施設への攻撃に歯止めがかからないおそれがある。
 安保3文書では、敵基地攻撃能力について「2015年の平和安全法制に際して示された武力行使の3要件を満たす場合に行使しうる」と明記されており、「我が国と密接な関係のある他国に対する武力攻撃が発生し、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生した場合に、わが国に一定の危険があると判断された場合(存立危機事態)に行使されることになってしまう。
 自衛隊とアメリカ軍が一体となって行動することが想定されている以上、アメリカが起こした戦争に巻き込まれることを避けることができなくなってしまう。
 今回の安保3文書改訂による軍備力が整備されれば、他国の基地に直接攻撃することができる軍事力を保有することになる。東アジア諸国をはじめとする周辺諸国に大きな威嚇的・威圧的効果が予想され、周辺諸国からの反発は避けられない。日本が先の大戦での侵略行為によってアジアの人々を苦しめたことも想起すれば、周辺諸国との外交に大きな支障をもたらすことは明らかである。
 自由法曹団東京支部は、日本国憲法に違反する敵基地攻撃能力保有を含む安保3文書の閣議決定に断固として反対し、その即時白紙撤回を求めるとともに、安保法制を廃止するために一層強い決意をもって取り組むものである。

2023年2月24日
自由法曹団東京支部総会
 
自由法曹団東京支部 〒112-0014 東京都文京区関口一丁目8-6 メゾン文京関口U202号 TEL:03-5227-8255 FAX:03-5227-8257