自由法曹団 東京支部
 
 
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団支部の活動紹介

安倍元首相の「国葬」に反対する決議

 岸田首相は、本年7月14日、奈良市内で参議院議員選挙の演説中に銃撃により死亡した安倍元首相の「国葬」を実施することを表明した。
 岸田首相は、安倍元首相の「国葬」を実施する理由として、安倍元首相が史上最長の在任期間であったこと、国際社会から高い評価を受けていたこと、国内外から哀悼の意が寄せられていること等を挙げる。
 しかし、いずれの理由も「国葬」を法的に正当化するものではない。
 「国葬」は、公費を投じて行われるものである以上、「法律による行政の原理」に基づいて、法的根拠無しには許容されない。
 「法律による行政の原理」とは、行政活動は、行政機関独自の判断で行われてはならず、国民の代表者で構成された立法府の制定する法律に従って行わなければならないとする三権分立における基本原理であり、三権分立を採用する日本国憲法においても当然の原理である。
 戦前の「国葬令」は、日本国憲法の制定により、既に失効しており、現在の日本には「国葬」を法的に正当化する法律は存在していない。
 他方、岸田首相は、内閣府設置法第4条3項33号で「国の儀式」が内閣府の所掌事務とされていることを根拠に「国葬」を閣議決定により実施することが可能であるとの見解を示している。
 しかし、内閣府設置法は、内閣の所管業務の範囲を定めた単なる組織法にすぎず、「国葬」の実施と公費の支出に関して法的根拠となるものではない。
 したがって、根拠法を持たない「国葬」を閣議決定によって実施することは、行政権の恣意的な行使にほかならず、法律による行政の原理、ひいては日本国憲法が標榜する三権分立の原則に反するものとして、到底許されるものではない。
 また、安倍元首相は、在任中、特定秘密保護法、安保法制、共謀罪を多数の国民の反対意見を無視して強行採決を繰り返し、日本国憲法の立憲主義・平和主義の理念に反して「戦争する国づくり」を強行した。また、「森友学園」、「加計学園」、「桜を見る会」といった各疑惑に対し、国民に対する説明責任を一切果たさなかったばかりか「桜を見る会」に関しては118回もの虚偽答弁を繰り返したことも明らかになっている。
 以上のような看過できない在任中の問題を無視したまま安倍元首相を「国葬」にし税金を使って国民に弔意を強いることは憲法19条の思想及び良心の自由を侵害する恐れがある。
 よって自由法曹団東京支部は、安倍元首相の「国葬」の実施に強く反対する。
 以上決議する。

2022年7月20日
自由法曹団東京支部幹事会
 
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