死刑執行に対する抗議と死刑制度が廃止されるまでの間、全ての死刑の執行を停止することを求める決議
1 法務省は12月21日、3名の死刑確定者の死刑を執行したと、発表した。死刑執行は2019年12月以来2年ぶりで、岸田内閣では初めての執行であった。
2 自由法曹団では、本年開催をした100周年・東京総会にて、死刑制度の廃止を求める決議をした。
死刑は、執行されてから誤判・えん罪であったことが判明しても原状に復することができない刑罰であり、誤判による死刑の執行は、国家による取り返しのつかない人権侵害である。死刑制度は、えん罪のみならず、その人の更生の道を絶ち、罪を犯した人をこの世から排除する刑罰である。犯罪の原因を全て本人ひとりに求め、その存在をこの世から抹殺することで問題を処理しようとするものである。そこには、本人を重大犯罪に駆り立てた環境的・社会的要因に対する考慮はない。
人は、人であるがゆえに最大限に尊重されなければならない。人の生命を奪う権利は「人の社会」の構成員である何人も有しない。「人の集団」である国家も同じである。個人の尊厳と生命の保障は「人の社会」の存立の基盤である。国家によって人の生命を奪う死刑制度は人の尊厳を最大限保障する日本国憲法と相容れない。憲法31条は「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない。」と規定するのみであり、死刑制度を積極的に維持すべき根拠となるものではない。
世界では、2020年12月末現在、法律上すべての犯罪において死刑を廃止している国は108か国、通常犯罪で死刑を廃止している国(8か国)と事実上死刑を廃止している国(10年以上死刑の執行がされていない国・28か国)を合計した国は144か国であり、世界の中で3分の2を占めている。先進国グループであるOECD加盟国37か国中、死刑制度を存置しているのは日本・韓国・米国の3か国のみであるが、韓国は1997年に死刑を執行して以降20年以上にわたって死刑を執行していない。米国では22州で死刑を廃止し、4州で死刑執行を停止しており、国家として統一して執行しているのは日本のみである。日本は、国連人権理事会における普遍的定期的審査(UPR)で審査国から死刑制度の廃止に向けた行動を取るべきとの勧告を受け続けている。また、自由権規約委員会からは2008年及び2014年に、拷問禁止委員会からは2013年に勧告を受けている。2021年3月に、第14回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)が開催された。その中で、EU代表部等から、未だに死刑制度を存置し、死刑執行を継続している国に対し、死刑廃止に向けて積極的に動き出すことが呼びかけられた。
3 前回の死刑執行は、2019年12月26日であった。本年3月に、京都で国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)が開催され、我が国の刑事司法の在り方について世界中の注目が集まったという経過がある中、約2年間、死刑の執行がない状態が続いていたにもかかわらず、死刑が執行されたことは大変遺憾である。さらに、執行された死刑囚の中には再審請求中の者も含まれており、この点でも今回の執行は強い非難に値する。
自由法曹団東京支部は、今回の死刑執行に対し強く抗議し、死刑制度を廃止する立法措置を講じること、死刑制度が廃止されるまでの間、全ての死刑の執行を停止することを改めて求める。
2021年12月23日
自由法曹団東京支部幹事会