沖縄県知事による辺野古新基地建設の設計変更不承認を断固支持し、国に審査請求取下げ及び同基地建設の中止を求める決議
1 本年11月25日、沖縄県知事は、沖縄防衛局が行っていた辺野古新基地建設にかかる埋立承認処分変更承認申請について、不承認とした。
軟弱地盤は最も深いところで水深90mに達し、そのような水深の地盤改良は世界的にも例がなく、専門家から技術的におよそ不可能と指摘されているが、日本政府は問題とされる軟弱地盤の力学的試験を行っておらず、災害の発生防止を十分に考慮した埋立変更計画とはならない。また、埋立対象地域は国指定天然記念物であるジュゴンの生息地域である可能性が指摘されているが、ジュゴンの生息への影響を考慮した環境保全措置がはかられるとは言い難い。加えて、日本政府は投入土砂の採取予定地に沖縄本島南部の糸満市八重瀬町等を加え、戦没者の遺骨が眠る地の土砂まで投入しようとしている。
このような重大な問題を無視するずさんな日本政府の変更承認申請を沖縄県知事が不承認としたことは合理的かつ妥当な判断であり、この判断を断固支持する。
2 ところが、日本政府は、沖縄県知事の不承認決定に対し、12月7日、国土交通大臣に行政不服審査法に基づく審査請求を行った。
しかるに、行政不服審査法は公権力の行使に不服のある者の救済手続を定めたもので、公権力の行使を行う国自身がこの手続を利用することは法律の濫用にほかならず、憲法第92条が地方自治を保障した趣旨を没却する事態となりかねない。
日本政府はこれまでにも、沖縄県民の意思を無視して、辺野古先の埋め立て海域の外周護岸工事を開始し土砂投入を強行する等しており、今回の審査請求はこうした日本政府の暴挙をさらに重ねるものであって、日本政府に速やかに取り下げることを求める。
3 そもそも、沖縄県民は、何度も新基地建設に反対する意思を明確に示してきており、新基地建設を強行することは、それ自体民主主義を否定し、地方自治を侵害するものにほかならない。また、辺野古新基地は、日米軍事同盟・在日米軍の機能を大幅に強化し、周辺諸国に新たな軍事的緊張をもたらし、日本と東アジアの平和を脅かすものである。基地のない平和な沖縄を実現するために必要なのは、普天間基地の即時無条件撤去と辺野古新基地建設の中止である。
4 自由法曹団東京支部は、オスプレイ配備等の基地強化反対、さらには首都東京から横田基地を始めとする7つの米軍基地の撤去を求めている法律家団体として、沖縄県民のたたかいに敬意を表し、連帯を表明してきた立場から、今般の沖縄県知事による辺野古新基地建設の設計変更不承認を断固支持するとともに、日本政府に対し、速やかに審査請求を取り下げ、新基地建設を中止することを求めるものである。
2021年12月23日
自由法曹団東京支部幹事会