自由法曹団 東京支部
 
 
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団支部の活動紹介

都立・公社病院を独立行政法人化するための「定款」提出に断固抗議し、独法化の白紙撤回と都立・公社病院の充実・体制強化を求める声明

1 小池都知事は本日開会した都議会定例会に都立8病院、公社6病院及びがん検診センターの「地方独立行政法人東京都立病院機構」設立のための「定款」(組織、業務等基本的な要件を定める根本規則)と関連議案を提案する予定である。コロナ禍の中、都民の命を守るかけがえのない都立・公社病院の役割を後退させかねない暴挙に断固抗議する。
 この都立・公社病院の独立行政法人化(以下「独法化」という。)は、2018年1月の都立病院経営委員会報告、同年3月の都立病院新改革実行プラン2018で打ち出され、2019年12月の都議会本会議において方針表明がなされていた。コロナ禍のもとで定款提案はしばし見送られていたが、コロナの収束が見えない状況であるにもかかわらず提案がなされることとなったものである。
2 しかし、独法化の理由がない。東京都予算の一般会計からの繰入金は、救急医療や精神医療等、地域の医療機関では対応困難な先端分野や不採算分野の医療サービス(行政的医療)を都民に提供する責務のある東京都が、法に則って拠出したものである。都議会でも、経営企画部長が「単なる赤字補填ではない」と回答している。
 また、経営の柔軟性についても、独法化が経営改善に結び付くわけではなく、各地に公立病院のままで経営を改善させた例がいくつもある。安易に独法化で経費削減を図ることは、不採算部門の切り捨て、医療従事者の人件費削減、利用者の負担増を意味する。これでは医療ニーズに対応できず、医療従事者の安定的確保や育成も到底実現されない。
 他方で緊急時には病床の確保や医療従事者の派遣等を都知事が指示できるようにするとのことであるが、であれば直営を堅持すべきである。民間だから人件費等のコスト削減をするが、公的責任だけを負わせる体制は身勝手きわまりない。
3 コロナ禍で可視化されたのは、行政的医療を担う都立・公社病院の重要性と抜本的な充実・体制強化の必要性であって、公社病院と先に独法化された健康長寿医療センターを直営に戻すことも含め、それらが今こそ求められている。独法化の動き自体が医療従事者に都立・公社病院を離れる方向に向かわせかねず、コロナ禍ではなおさらである。独法化を白紙撤回し、独法化の動きを一切やめることがコロナ対策の一つである。
 医療サービスは、都民の命と健康を守る最重要分野であり、行政的医療の提供を放棄する独法化は都民の命と健康を守る責任を負う東京都として、断じて許されない。
4 自由法曹団東京支部は、暮らしと平和、人権、民主主義を擁護する法律家団体として都立・公社病院を独立行政法人化するための「定款」提出に断固抗議し、独法化の白紙撤回と都立・公社病院の充実・体制強化を求めるたたかいに取り組む次第である。

2021年9月28日
自由法曹団東京支部
支部長 黒岩哲彦

 
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