自由法曹団 東京支部
 
 
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団支部の活動紹介

デジタル監視法案について,慎重な審議を求め,拙速に採決をしないよう求めます

2021年5月10日
東京都文京区関口1-8-6 メゾン文京関口II202号
TEL03-5227-8255/FAX 03-5227-8257
自由法曹団東京支部 支 部 長 黒岩哲彦
同 幹 事 長 金 竜介
同 事務局長 中川勝之

 デジタル監視法(デジタル改革関連法案)は,総ページ数1000ページを超え,60本を超える法律の改正を含む膨大な内容のまとめ法案ですが,衆議院では「多くの論点が消化不良のまま、わずか27時間半の審議で採決」されたと報じられています(時事通信2021年4月3日)。参議院では,これまでに内閣委員会で22時間弱しか審議に充てられていません。
● デジタル庁を内閣直属の組織として設置し,その長を内閣総理大臣が担うというこれまでにない特殊な行政組織を設ける内容となっていますが,内閣総理大臣によるデジタル情報の独占管理体制につながる危険性は、これまでの国会審議によって払拭されていません。
● 衆議院では,個人情報保護法の要件を限定することを内容とする野党修正案がとりいれられず,このままでは市民のプライバシーと個人情報の保護を後退させることになりかねません。
● 強大な権限を持つデジタル庁の創設によって、プライバシー侵害が現実のものとならないようにするためには、まず個人情報保護委員会の組織を拡大・強化することが必要です。
● 与党推薦の参考人である宍戸常寿東大教授は、「データの利活用によって監視に使われやすい仕組みには危惧がある。公共の場所での顔認証などは全面的に禁止するなどの措置が望ましい」との意見を述べていますが,この意見が取り入れられないまま採決をするのでは,デジタルデータの利活用が監視の強化につながる危惧が現実のものとなってしまいます。
● これまでの分権的な個人情報保護システムの在り方を根本から転換し、国による統一的な規制を行うものですが,各公共団体において構築してきた独自の個人情報保護のあり方を壊し、公共団体による先進的な個人情報保護制度の構築を後退させるものになりかねません。
● この法律によって国の諸機関や地方自治体の情報システムの共通仕様化が強力にすすめられることになりますが,自治事務の一環であり、国が情報システムを一方的に支配・統合することは、地方自治の本旨(憲法92条)、条例制定権(憲法94条)に違反する疑いも生じています。

 このような様々な問題が残されているデジタル監視法案について,拙速な採決をすることなく慎重な審議を求めます。

以上
 
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