自由法曹団 東京支部
 
 
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団支部の活動紹介

東京五輪(オリンピック・パラリンピック)の2021年開催を直ちに中止にし、関係機関による真摯な協議と十分な情報公開を求める声明

 1年程度の延期となった7月23日の東京五輪の開幕まで100日余りとなった。
 しかし、延長の理由となったコロナは依然として世界的に猛威をふるい続け、ワクチン接種が開始するも、収束する見込みはない。日本国内においても緊急事態宣言解除後に感染増が目立ち、その中には感染力が強いといわれる変異株が含まれている。関係者の懸命な努力によっても安全・安心な東京五輪が実現されないことは明らかであり、それゆえに再延期や中止を求める世論が国内外で多数であることは当然である。
 にもかかわらず、3月25日には聖火リレーがスタートする等、東京五輪の開催を強行する動きが強まっている。東京五輪開催の決定権を有するIOCは1月27日の理事会で7月23日開幕を明らかにし、日本側(日本政府、東京都及びJOC)も開催ありきの姿勢を変えていない。こうした背景には再延期や中止による経済的損失があるといわれる。
 しかし、そもそも、人々の命と健康が第一で、経済的損失と比べるべきものではない。
 また、海外観客の受け入れが断念されたが、選手関係者だけでも万単位の入国者がいてコロナの影響を排除し切れない。何よりも検査抑制、ワクチン接種の遅れ、不十分な補償等の不十分な政策は改まらず、国内での感染増が予想される。熱中症対策に加えてコロナ対策の医療従事者が必要とされるが、その確保はきわめて困難である。こうした中での開催強行は国内外の多数の人々の命と健康をないがしろにし、コロナの影響を長期化・深刻化させるだけでなく、開催しない場合の経済的損失を上回る経済的損失が発生しかねない。
 さらに、感染状況やワクチン接種に差がある中で選手間に不公平感がぬぐえず、代表選考も遅れている種目もある。こうした状況下での東京五輪の開催は、平和と友好の祭典というオリンピックの基本理念とも相容れない。
 東京五輪の人件費単価が高額であるが実態は不明との報道等もあるように、今や東京五輪によって得られる一部関係者の利益のために、経済的損失を避けるという口実で東京五輪開催が強行されるものと考えざるを得ないが、その大義はない。まずは東京五輪開催の決定権を有するIOCが本年開催を直ちに中止と判断すべきである。そうしないのであれば、日本側が本年開催の中止をIOCに申し入れるべきである。いずれの場合でも中止した場合の取扱いについて真摯な協議を直ちにすべきであり、その実効性確保のため、十分な情報公開をすべきである。なお、コロナがパンデミックである以上、日本側から中止を申し入れ、仮に賠償金・違約金が発生するとしても全額日本側が負担すべきものではない。
 以上のとおり、自由法曹団東京支部は、東京五輪(オリンピック・パラリンピック)の2021年開催を直ちに中止にし、関係機関による真摯な協議と十分な情報公開を求める。

2021年4月5日
自由法曹団東京支部
支部長 黒岩哲彦
 
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