自由法曹団 東京支部
 
 
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団支部の活動紹介

菅政権による「故中曽根康弘」合同葬儀に際しての弔意表明を求める通知に抗議し撤回を求める声明

 「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀が明日2020年10月17日に実施されるが、それに際し、政府は2日、合同葬儀当日に各府省で弔旗掲揚と黙とうをするものとし、あわせて同様の方法により哀悼の意を表するよう、各府省へ各公署に対する協力を要望した。また、内閣府は最高裁判所に弔意表明の協力を依頼した。それらを受け、文部科学省は各都道府県の教育委員会、国立大学法人や研究機関に対し、総務省は各都道府県・各市区町村に対し、最高裁判所は全国の裁判所に対し、それぞれ弔意表明を求める要望ないし協力依頼をする通知を出した。
 そもそも、弔意については、それを示すかどうかも含めて憲法19条が定める内心の自由にかかわる問題であり、国家がそれを強制してはならないことはもちろん、事実上強制にわたるような行為をしてはならない。閣議了解、内閣府の通知及びそれを受けた通知によれば、各府省の職員に対しては職務として弔意表明するよう求めるものとなりかねず強制にわたるおそれがあり、その他の関係機関の職員に対しては各公署の対応いかんによっては事実上の強制となりかねない。折しも菅政権は日本学術会議の人事に介入し、憲法23条が定める学問の自由を侵害していることからすれば、そうした危険性は一層高い。
 また、教育基本法14条2項は、「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。」と定めており、教育現場では政治的中立が厳しく求められるところ、前記通知はこれに違反するものである。
 弔意表明を求める要望等に応じなくとも、不利益取扱いは一切許されないというべきである。
 直近の2007年の宮沢元首相の合同葬儀では、各府省への各公署に対する協力要望はなかった。それについて加藤官房長官は諸般の事情を踏まえた判断である旨述べており、関係機関に対する要望等の通知は不可欠ではない。さらに言えば、本件合同葬儀への約9600万円もの国費投入自体が不要である。
 自由法曹団東京支部は、菅政権による「故中曽根康弘」内閣・自由民主党合同葬儀に際しての弔意表明を求める通知に抗議してその撤回を求めるとともに、弔意表明を求める要望等に応じない場合に不利益取扱いが一切なされてはならないことを求めるものである。

2020年10月16日
自由法曹団東京支部
支部長 黒岩哲彦
 
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