自由法曹団 東京支部
 
 
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団支部の活動紹介

新型コロナウイルス対策の抜本的強化を求めるとともに「緊急事態宣言」に反対する声明

 安倍政権は、新型コロナウイルスの感染拡大への対策として、緊急対応策(2月13日)を打ち出し、さらには第2弾の緊急対応策(3月10日)を打ち出して、感染拡大防止策と医療提供体制の整備、学校の臨時休業に伴って生じる課題への対応、事業活動の縮小や雇用への対応、事態の変化に即応した緊急措置等を講じようとしている。
 しかし、その規模は予備費の枠内であってきわめて不十分であり、現在審議中の来年度予算の修正を行って対策の抜本的強化をすべきである。
 まず、感染拡大防止策と医療提供体制の整備については、検査対象を広げ、無保険者を含めた国内の居住者・在留者が身近な医療機関で本人負担なしの検査と治療が受けられるようにすべきである。感染拡大の長期化も予想されることから、感染拡大防止策の中心的な役割を担う公立・公的病院の人的・物的体制を強化すべきである。同時に、安倍政権に対しては、公立・公的病院の再編統合の方針、東京都に対しては、都立病院の独立行政法人化の方針をそれぞれ直ちに撤回することを求める。
 また、学校の臨時休業については、専門家会議に基づかない安倍首相の政治的判断による要請でなされ、その経緯自体が問題であるが、小学校等の臨時休業により職場を休まざるを得なくなった保護者や影響を受けた事業者への支援、補償等は当然であり、さらに、有給の病気休暇の法制化等、労働者が休みやすい環境整備を充実すべきである。
 こうした安倍首相の政治的判断による学校の臨時休業に伴ういわば自ら招いた課題へはきわめて不十分ながら対応がなされようとしているが、国内外の観光業やイベント関連事業は壊滅的打撃を受けており、町の飲食店に至るまで景気が落ち込み、それらに伴って解雇・内定取消、雇止め等も発生しつつあるが、対策はあまりに貧弱である。労働法令遵守の周知徹底はもちろん、既に打ち出された無担保・無利子の融資、雇用調整助成金の補助のさらなる拡大、いわゆるフリーランスに対する所得補償制度の創設、さらには消費税減税等、市民生活、中小企業の経営に対する全面的な支援の強化が必要である。
 こうした中、事態の変化に即応した緊急措置等として、3月13日、新型コロナウイルスを対象に加える改定新型インフルエンザ対策特別措置法が参議院本会議で可決・成立し、翌14日に施行されたが、これに断固反対し厳重に抗議する。
 改定特措法は、首相が「緊急事態宣言」を発令すると、都道府県知事に外出自粛、施設の使用制限等の要請、医薬品や食品の収用等の権限が与えられるとしており、憲法が保障する基本的人権が広範に制限されることとなる。制約が規定の「必要最小限度」とされる保証はなく、人権制限に対する救済措置や経済損失を補償する仕組みもない。しかも、このような重大な「緊急事態宣言」の発令要件は不明確で、国会の事前承認も不要とされている。さらに、指定公共機関であるNHKに首相が必要な指示が出来るとされ、放送内容への指示の危険性もある。こうした問題について再度徹底審議し、再改正等すべきである。
 そもそも、緊急に求められることは先に述べたような対策の抜本的強化であり、それをしないでおいて強権的措置を講ずることではない。安倍政権は緊急事態条項を盛り込む改憲を狙っており、その布石としての特措法改定としか考えられない。それでいて過去の災害対応からみても、安倍政権は危機管理に対応する能力が乏しい。これまで安倍首相は様々な問題で独断的・場当たり的な判断を繰り返し、学校の臨時休業もそうであるが、そのような安倍首相による「緊急事態宣言」が招く事態の方こそ危険極まりないのである。
 自由法曹団東京支部は、市民生活、中小企業の経営に寄り添った新型コロナウイルス対策の抜本的強化を求めるとともに、特措法改定と「緊急事態宣言」に対して断固反対して同法の再度の徹底審議と再改正等を求めるものである。

2020年3月18日
自由法曹団東京支部幹事会
 
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