自由法曹団 東京支部
 
 
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団支部の活動紹介

「働き方改革」一括法による改悪等に反対して労働者保護の強化と 職場のハラスメント防止法の早期制定を求める決議

1(1) 安倍政権は,2018年の通常国会で,多くの労働者・労働組合が強く反対したにもかかわらず,全く審議不十分なまま,「働き方改革」一括法の成立を強行させた。
  一括法により創設された高度プロフェッショナル制度は,一部の労働者について,労働基準法の「労働時間,休憩,休日及び深夜の割増賃金」に関する規定を一切適用せず,超長時間・連続労働を可能にする「残業代ゼロ・過労死激増」法である。
  また,一括法による残業時間の上限は,時間外労働と休日労働をあわせて,「単月で100時間未満」,「2〜6か月で,1か月当たり平均80時間」という長大なものになっており,過労死ラインの残業を許容する「過労死合法化」法となっている。
  さらに,安倍政権は,一括法成立後においても,「裁量労働制実態調査に関する専門家検討会」を4回開催するなど,労働時間データの捏造等により一括法案から削除に追い込まれた企画業務型裁量労働制の拡大の目論みを捨てていない。
 (2) 「働き方改革」一括法と裁量労働制の拡大は,残業代不払いと過労死を促進し,正社員と非正規労働者の間の格差を固定化し,正社員の非正規労働者や請負委託への置き換えを促進し,無権利労働を拡大する法律であり,とうてい認めることはできない。
  今,求められていることは,@「高度プロフェッショナル制度の即時廃止」,A「実効性のある労働時間の上限規制,B勤務間インターバル制度の創設,C裁量労働制の対象業務の限定,D同一労働同一賃金原則の確立,E人間らしく働くルールの確立といった労働者保護の強化のための労働法制の抜本改正である。
  特に,高プロ制度の廃止を求めるだけでなく,労使委員会を始めとした職場内外の取り組み等を通じて全力を挙げて職場への導入阻止の取り組みを強めなければならない。
  また,働く者の命や健康を守るため,36協定等により実効性のある長時間労働の是正に取り組んでいくことも必要である。
  さらに,一括法は不合理な待遇の禁止規定等があるもののこれだけでは,従前の格差の固定化につながるものであり,真の同一労働同一賃金の原則を確立するためには,労働組合が中心となって指針(ガイドライン)の水準にとどまらない待遇を積極的に要求するなど職場が一体となって働く者の権利実現に取り組んでいくことも求められる。

2 厚生労働省は,これまでに「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」を5回開催し,解雇の金銭救済制度の導入を押し進めようとしている。現段階で検討されているのは,金銭救済は,労働者側の申立の際に限られる制度ではあるが,他の労働法制と同様、使用者側に申立権を付与するなど,制度が緩和されない保証は一切ない。そもそも解雇の金銭解決制度に立法事実がなく,労働者の権利利益を保護する制度ではなく,その導入に強く反対する。

3 今年,ILO総会では「労働の世界における暴力とハラスメント」の禁止に向けた新たな国際労働基準の策定がなされようとしている。また,日本の職場では,様々なハラスメントが横行し,労働者の人権が侵害されていて,相談数が増加している。
 そうした中,厚生労働省の労働政策審議会は,2018年12月14日,「女性の職業生活における活躍の推進及び職場のハラスメント防止対策等のあり方について」の建議を行った。建議は,パワーハラスメントの防止対策として,事業主に対して,パワハラ防止のための雇用管理上の措置を講じることを法律で義務付けることが適当であるとして,パワハラ防止に向けた措置義務を盛り込んだ法律を制定する方針を打ち出した。
 しかし,建議は,セクハラを含めて,違法となるハラスメント行為の要件の明確化や加害者の損害賠償義務の法制化等について,中長期的な検討課題にとどめており,極めて不十分である。
 職場から暴力とハラスメントを一掃して労働者の人権を守るためには,禁止される違法なハラスメント行為を明確化し,被害者の損害賠償請求権や使用者による実効性あるハラスメント防止措置等を明記した包括的なハラスメント禁止法を制定する必要がある。早期に包括的なハラスメント禁止法としての「仕事の世界における暴力とハラスメント禁止法」の制定が求められる。

4 自由法曹団東京支部は,「働き方改革」一括法による改悪,企画業務型裁量労働制の拡大,解雇の金銭解決制度に反対して労働者保護の強化のための労働法制の抜本改正を求めるとともに,職場のハラスメント防止法の早期制定を求めるため全力をあげて奮闘するとともに,労働者の権利・利益を守るための取り組みにも全力を尽くす決意である。

2019年2月23日
自由法曹団東京支部第47回定期総会
 
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