自由法曹団 東京支部
 
 
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団支部の活動紹介

東京都迷惑防止条例改正に反対する決議

  1.  2018年2月21日に始まった第1回都議会定例会において、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の一部を改正する条例案」(以下「迷惑防止条例改正案」という。)が提出されるとされている。迷惑防止条例改正案では、現行の規制に加えて、5条の2第1項第1号に「みだりにうろつくこと」を、同第2号に「監視していると告げること」を、同第3号に「電子メール(SNS含む)を送信すること」を、同第6号に「名誉を毀損する事項を告げること」を、同第7号に「性的羞恥心を害する事項を告げること」をそれぞれ付け加え、新たにこれらの行為を規制の対象として、罰則を重くすることとされている。あわせて、5条第1項2号を改正し、盗撮規制の場所が拡大されることになっている。
     これらの迷惑防止条例改正案は、市民運動、労働運動、報道活動等,本来自由であるべき市民活動に対する警察権力による介入を容易とする道を開くものであり、規制対象を安易に拡大することは断じて容認することはできない。

  2.  迷惑防止条例改正案では、2016年12月14日に改正されたストーカー行為等の規制等に関する法律(以下「ストーカー規制法」という。)の改正案が規制する行為態様と同一の行為の規制を新たにおこなうものとされている。
     しかしながら、2016年12月14日改正ストーカー規制法で追加された行為態様は、「みだりにうろつくこと」と、「電子メール(SNS含む)を送信すること」のみであり、迷惑防止条例改正案で新たに規制される他の行為態様については、ストーカー規制法ではもともと規制されていたものである。
     そして、ストーカー規制法では規制対象が「恋愛感情」等を充足する目的の行為に限定されているのに対し、迷惑防止条例では「悪意の感情等」を目的とする行為にまで規制対象が拡大されている。これは、例えば、市民が国会前において数回安倍政権の批判をすること、労働組合が社前集会を開いて会社の批判を繰り返すこと、消費者団体が繰り返し不買運動を行うこと等が、改正案5条の2第1項第6号、「名誉を毀損する事項を告げること」に該当するとされる可能性や、マスコミによる取材活動が同条同項第1号、「みだりにうろつくこと」に該当するとされ、これらの正当な市民活動に警察が介入する根拠とされるおそれが高い。

  3.  迷惑防止条例5条の2第1項各号が規定するいわゆる「つきまとい行為」は、2002年6月都議会で一度提出されて廃案となったものである。その後、要件が若干厳格化され、2003年に再度条例案が提出され可決された。「つきまとい行為」が規制対象とされた当時の条例においても,2016年12月14日改正ストーカー規制法で追加された行為態様を除いて,全て規制対象とされていた。今回の「迷惑防止条例」改正案の提出に際して,あえてこれらの行為態様についてストーカー規制法による規制に加えて「迷惑防止条例」による規制を行うべき新たな立法事実は明らかにされていない。

  4.  私たち自由法曹団東京支部は,特定秘密保護法、刑事訴訟法の改悪、共謀罪が成立し、憲法9条の改憲を安倍政権が狙うなかで、いま,市民運動、労働運動、マスコミによる取材活動を規制する根拠とされるおそれのある条例案を提出することに強く抗議し,条例案の撤回を求めるとともに、都議会における審議を通じて廃案にするよう求めるものである。
2018年2月24日
自由法曹団東京支部第46回定期総会
 
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