自由法曹団 東京支部
 
 
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団支部の活動紹介

家庭教育支援法案の国会提出に反対し,道徳の教科化の撤回を求める決議

  1.  安倍政権は,「教育再生」の名のもと,2015年3月,学校教育法施行規則と学習指導要領を改訂し,道徳を「特別の教科」として位置づけ,子どもに愛国心を持たせることを明記し,2017年3月31日には保育所保育指針・幼稚園教育要領を改訂し,保育所・幼稚園段階から国旗国歌に親しむことを明記した。さらに,2017年3月31日,安倍内閣は,教育勅語を容認する閣議決定を行った。これらは,「積極的平和主義」を掲げる「国家安全保障戦略」の中で「我が国と郷土を愛する心を養う」ことを謳っていること等からも戦争する国に変えていくための人材づくりを目指した教育への介入にほかならない。
     なかでも喫緊の課題は,政府・自民党が愛国心など政府にとって都合の良い価値観を植え付けるべく進めている@家庭教育支援法案の国会上程,A2018年4月から小学校で,来年4月から中学校で本格実施される道徳の教科化の問題である。

  2.  自民党総合政策集2017では,「家庭教育支援法案を制定します」と明言されており,政府の教育再生実行会議・第10次提言(2017年6月1日)においても家庭においては「豊かな情操や基本的な生活習慣,家族や他人に対する思いやり,善悪の判断などの基本的な倫理観,社会的なマナー,自制心や自立心を養うこと」が求められるとし,家庭教育支援の名の下で,国が定める価値観を家庭内にまで押し付ける姿勢を露骨に示している。同法案の構造は,文部省が1942年5月に発表した「戦時家庭教育指導要項」に酷似しており,同法案は,家庭への介入・支配という観点からも,また,憲法24条を否定し,子どもの思想良心の自由,学習権,成長発達権を侵害する観点からも日本国憲法と矛盾抵触する極めて問題の多い法案である。
     にもかかわらず,これまでにも自民党議員が紹介議員となり家庭教育支援法の早期制定を求める請願が複数回提出されており,今国会への法案提出が危惧されるところであり,断固,法案提出を阻止しなければならない。

  3.  また,道徳の教科化が今年4月から小学校において本格実施され,中学校においては来年4月から本格実施されることとなっており,教科としての「道徳」が学校教育の中に導入される。自由法曹団東京支部は,昨年夏の小学校道徳の教科書採択に際して,各道徳教科書の問題点とともに根本にある教科化の問題を取り上げ,道徳の教科化自体に反対してきた。今年は,小学校での道徳教科化の本格実施に伴い,「評価」を伴って一定の価値観の押し付けが本格化することが懸念される。
     この道徳の教科化については,2015年2月28日付「安倍政権の教育『再生』に反対する決議」等で問題点を指摘した通り,愛国心を押し付け,思想良心の自由や成長発達権を侵害するものであり,その目的は戦争をするための人づくりにあることは明らかであり,即刻撤回されなければならない。

  4.  私たち自由法曹団東京支部は,「安倍教育再生」が進める戦争をする国民を作り出すためのあらゆる教育政策に断固として反対し,その一環である家庭教育支援法案の国会提出を阻止し,道徳の教科化の撤回をもとめて奮闘する決意である。
2018年2月24日
自由法曹団東京支部第46回定期総会
 
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