自由法曹団 東京支部
 
 
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団支部の活動紹介

沖縄県高江でのヘリパッド建設及び警視庁を含む全国の機動隊派遣中止を求める決議

  1. 2016年7月11日、参議院選挙が終了した翌日、突如として安倍政権は沖縄県高江のヘリパッド建設準備を開始した。その後3カ月間、全国の機動隊を動員して非暴力による座り込みをする住民を力ずくで排除するという弾圧を強行し、自衛隊のヘリまで使って資材搬入を強行する安倍政権の暴挙に、断固として抗議する。
  2. 1996(平成8)年12月2日、第一次橋本内閣は、「普天間飛行場に関するSACO最終報告」を承認し、沖縄県の米軍北部訓練場7513ヘクタールのうち、3987ヘクタールの返還と引き換えに、残余部分にヘリパッド建設をするという合意をした。日米両政府は、北部訓練場の「過半」の返還が沖縄県の「負担軽減」につながるなどと説明している。しかし、北部訓練場の約半分の返還と引き換えという合意は、米軍の都合により新たな訓練場を建設するためのまやかしである。すなわち、「約51%が使用できない北部訓練場を日本政府に返還する一方、利用可能な訓練場所を新たに設けることで、限られた土地を最大限に活用できるようになる」(米海兵隊がアジア太平洋地域の基地運用構想をまとめた報告書「戦略展望2025」)と米海兵隊は報告している。しかも、北部訓練場の返還は、6か所のヘリパッドが建設されない限り行われないという不当な内容の合意である。日本政府の財政負担で、使えない北部訓練場を、米海兵隊にとって使える訓練場にすることが上記合意の本質であった。
     このような不当な合意に対し、沖縄県国頭郡東村高江の住民たちは、平和に逆行する米軍基地の強化に反対し、オスプレイ等の危険な航空機の飛来を防ぎ、平穏な生活を守るため、また、特別天然記念物であるヤンバルクイナを筆頭とする貴重な動物が生息し、マングローブ林などを育むやんばるの自然を守るために、2007(平成19)年7月2日より、ヘリパッドの建設反対の座り込みを開始し、非暴力によって工事を阻止してきた。
  3. しかし、2015(平成27)年2月、防衛省は、米軍に対して高江のN4地区の2箇所をヘリパッドとして米軍に先行提供した。そして、参議院選挙が終了した2016(平成28)年7月11日より、安倍政権は、突如としてヘリパッド建設準備を開始し、同月22日には全国の機動隊500名以上と沖縄県警の機動隊により、高江のN1ゲート前に座り込んで建設を阻止してきた住民のテントを強制撤去した。
     その後も、高江の住民と沖縄や全国から集まった支援者が、座り込みによる非暴力のヘリパッド建設阻止行動を続けている。これに対して政府は、機動隊を使い、なんら法的な根拠なく有形力を行使して、座り込む市民を排除し、実質逮捕といえる身体拘束を強行し、ヘリパッド建設を推し進めている。また、多くの不当逮捕行為を行っている。さらに、自衛隊ヘリさえ使い資材を搬入している。また、大阪府警の機動隊員は、座り込みをしている住民に対し「土人」という差別用語を使って罵倒する等信じがたい暴言を吐き、全国から批判を受けている。
     このような情勢の中、沖縄県議会は、2016(平成28)年7月21日に、ヘリパッド建設中止を求める意見書を与党3会派(社民・社大・結、おきなわ、日本共産党)の賛成多数で可決した。しかし、安倍首相は、同年9月26日、臨時国会における所信表明で、高江のヘリパッド建設につき、「もはや先送りは許されません」などと述べ、沖縄県の民意を無視し、徹底的な対米従属の姿勢を貫くことを表明している。
  4. 高江のヘリパッド建設は、辺野古新基地建設と同じく、普天間飛行場の移設に係る合意「普天間飛行場に関するSACO最終報告」により、強行されているものである。本来、普天間飛行場は無条件で返還されるべきだが、徹底的な対米従属を貫く安倍政権は、辺野古新基地に先行して高江のヘリパッド建設を強行することによって、沖縄の民意を無視し、基地移設の既成事実を作ろうとしていることが明らかである。
     一方で、沖縄では、米海兵隊基地建設反対の民意はゆるぎないものになっている。2014(平成26)年1月に行われた名護市長選挙では、辺野古新基地建設に反対する稲嶺市長が再選され、続く9月に行われた名護市議会選挙では辺野古新基地建設反対派が勝利し議会の多数派になった。11月に行われた知事選では、翁長知事が10万票の大差で圧勝し、12月に行われた衆議院選挙では、沖縄の全選挙区で辺野古新基地建設を掲げた候補者が勝利した。そして、2016(平成28)年7月に行われた参議院選挙では、辺野古新基地建設反対を掲げたオール沖縄の伊波洋一氏が現職大臣を破って当選した。
     このような情勢のもとで、沖縄の民意を無視して基地建設を強行することは、憲法の平和主義(前文、9条)と地方自治の本旨(憲法94条)、民主主義を踏みにじるものであり、決して許されるものではない。
  5. 以上のとおり、高江のヘリパッド建設はいかなる意味でも許されるものではなく、また、そのために機動隊を投入して違法な有形力を行使し、違法逮捕を繰り返すことも許されないことである。自由と民主主義、基本的人権を擁護する法律家団体である自由法曹団東京支部は、このような安倍政権の暴挙に対して、沖縄県高江でのヘリパッド建設及び警視庁を含む全国の機動隊派遣中止を強く求める。
2016年10月26日
自由法曹団東京支部幹事会
 
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