自由法曹団 東京支部
 
 
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団支部の活動紹介

足立区役所の本体業務の外部委託問題 ―戸籍業務、国保業務―

 足立区近藤弥生区長は、区役所の本体業務である戸籍業務と国民健康保険業務の外部委託を強行している。足立区民は、戸籍業務の外部委託に対して東京地裁で住民訴訟、国民健康保険業務の外部委託に対しては住民監査請求を闘っている。

第1 戸籍業務の外部委託との闘いー住民訴訟

  1. 足立区は2012年7月に各地の自治体をメンバーにして「日本公共サービス研究会」なるものを立ち上げて幹事自治体となり、第1回研究会を足立区内で行い、自治体の市場化、アウトソーシングのお先棒担ぎをしてきた。近藤弥生区長は、2013年3月に富士ゼロックスシステムサービスと「足立区戸籍・区民事務所窓口の業務等委託」契約を結び、は富士ゼロックスシステムサービスには初期2年間の2013年7月から2015年9月まででの間に4億円が転がり込むようにした。富士ゼロックスシステムサービスは足立区での「成功例」を突破口として自治体の外部委託で大もうけをしようをしている。
  2. 私たちは「足立区政の外部委託を考える会」を結成し、署名1万3000筆、足立区当局との交渉、2回の大きな集会、区役所前・北千住駅前・ショッピングモール前での宣伝、チラシの全戸配布、チラシの新聞折込など精力的な活動をしてきました。この闘いは、東京法務局による「戸籍事務現地調査結果(2014年3月17日)」において、「戸籍法上の受理決定は、行政処分である。しかし、業務手順では、区職員の審査前に民間事業者が受理決定(処分決定)の入力行為を行うことになっていて民間業者が行政処分をしている。戸籍法に違反している」との見解を引き出すことに成功した。
  3. 住民監査請求と住民訴訟
     足立区民1392人は2014年11月17日に住民監査請求をしたところ、12月25日に監査結果が出された。監査結果は「当該契約に基づく公金の支出は、違法・不当ではない。」とする不当で不十分なものであったが、「過去の情報漏えい事件の報告、審議が行われなかったことは適切を欠いていたといわざるをえない」「東京法務局や東京労働局からの指摘にみられるように準備不足が露呈し、区民に不信や不安を与えたことも事実である。」と指摘をさせた。
     足立区民1389人は2015年1月21日に東京地方裁判所に住民訴訟を提訴した(東京地裁民事第3部)。法的論点は,@足立区民のプライバシー権を侵害、A非能率、非効率であり地方自治法違反、B戸籍法違反。C労働者派遣法に違反である。
     2016年7月1日までに5回口頭弁論が行われた。毎回の口頭弁論は、103号大法廷はバーの中に原告と代理人が50人すわり、また傍聴席約100席を満員としている。
     「窓口業務等委託月次報告書」のマスキング問題が大きな争点となっている。

第2 国民健康保険業務の外部委託との闘いー住民監査請求

  1. 足立区は戸籍業務につづいて、国民健康保険業務を2012年3月に株式会社エヌ・ティ・ティ・データに外部委託をし、2016年4月にからはJV(株式会社エヌ・ティ・ティ・データ、株式会社ベルシステム24、株式会社DACS)に委託をした。国保業務があつかう個人情報は国民健康保険情報・住記情報・生保情報・課税情報・介護情報・後期高齢医療情報・年金情報・障がい福祉情報・保健衛生情報・戸籍情報・財産情報・滞納情報など広範なものである。
  2. 足立区民5人は、足立区監査委員会に対して2016年6月8日に住民監査請求をした。私たちは@個人情報漏洩の危険性、A「本件共同事業体」の形式による偽装請負、B「契約上の地位の移転」はプロポーザル方式を無意味にすることと主張している。
     足立区監査委員は「措置の必要は認めない」との監査結果をだした。但し、「日本各地で委託現場における個人情報の漏洩や労働関係法令違反などの報道は今もなお後を絶たない。それ故に委託することに対する不安や誤解が生じている。区民の不安を払拭し、区政への信頼を高めるため、委託の進捗及び委託による効果について適宜公表することを要望する。」との意見が付されている。
     この監査結果を受けて、住民訴訟の提訴については、検討中である。
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