自由法曹団 東京支部
 
 
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団支部の活動紹介

声明:舛添都知事の都政私物化・住民福祉の切り捨てを許さず、知事辞職と住民本位の都政への転換を求める

  1. 公費濫用の問題
     舛添要一都知事の公費使用のあり方が大きな問題となっている。
     高額にのぼる海外旅費は「東京都知事等の給料等に関する条例」の基準をはるかに超えている。同条例によれば、外国旅行の日当は、1人最高1万3100円、宿泊費は4万200円、食卓料は1万100円であった。ところが、2015年10月から11月の5日間の海外出張では、知事の宿泊費は1泊19万7200円、参加者20人で5041万円、1日1000万円を超えている。2016年4月の舛添都知事と随行員のアメリカ出張では、航空費250万円、宿泊費74万円を使い、本年度の海外出張のために3億3500万円を予算化している。2014年には、同様の海外出張を6回行ない、総費用合計は1億5650万円である。
     石原慎太郎元都知事も、高額視察費が批判をよび、東京都は2007年に「改善策」を打ち出した。しかし、舛添都知事の海外旅費は、1回の平均が石原元都知事の費用を約1000万円上回る豪華さである。最高約20万円もするスイートルーム、ファーストクラスの航空運賃、随行人数の多さ等が要因であり「大名旅行」とも称されている。加えて、ほぼ毎週末(年間48回)、湯河原の別荘へ公用車で往復の送迎をさせていたことは、公私混同も甚だしいものと言わざるをえない。
     舛添都知事は、都民に選挙で選ばれた都民への奉仕者であるとの自覚を欠いており、住民が主権者であるという住民自治をわきまえていない点で、都知事としての資質を欠くものと言うほかない。
  2. 都の予算の問題
     舛添都知事は、自身は公費を濫用しながら、都の予算も都民のために編成しているとはいえず、両者には通底するものがある。
     東京都の2016年度予算は、一般会計が7兆110億円、特別会計、公営企業会計を併せた総額は13兆6560億円であり、スウェーデンの国家予算を上回って「先進」国中17位の財政規模である。ところが、舛添都知事は、主権者都民よりも政権の顔色を窺い、アベノミクスの新三本の矢に貢献すると自ら説明して、「トリクルダウン」の経済政策を予算編成の柱にした。予算の大半はオリンピックや大規模開発につぎ込まれ、昨年度予算編成方針に明記されていた「都民福祉の充実による生活の質の向上」は基本事項からはずされた。
     そのもとで、東京都は、今年度3200億円もの収入増となったが、これを都民のために使うのではなく、すべてオリンピック等の基金にため込んでしまった。東京都のため込みは1兆9000億円近くにも達している。
     また、東京都は、住民追いだし・住環境破壊の外郭環状道路やオリンピックなどを口実とした都市計画道路(特定整備路線)など、不要不急の大規模公共事業を推進している。
     このオリンピックについては、東京への招致のために、招致委員会から国際オリンピック委員会委員周辺に2億300万円が送金されており裏金疑惑が指摘されている。さらに、舛添都知事が突然、新国立競技場の解体費・建設費1581億円のうち関連整備費を含む448億円を都が支出すると表明したことが問題となっている。
     他方で、国の施策である国民健康保険や介護保険の値上げによる負担増の解消や、不足する保育所や介護施設・サービスの抜本的拡充、若者の雇用の創出と教育費負担の改善、木造住宅やマンションの耐震化、経営難に苦しむ中小企業への支援には十分な予算措置がとられていない。都営住宅は新規建設予算が1円も計上されず、都教委は都立定時制高校4校の廃校を決定した。
  3. 都知事の辞職を求める
     自らは公費を濫用し、都財政の使い方は、安倍政権と財界のための開発には大盤振る舞い、都民が求める生活のための支出は削減をする、このような舛添都知事は、住民の福祉を増進させることを基本的な役割とする地方自治体の首長たる資格を欠いている。財界奉仕・住民切り捨ての政治を推進しようとしている自公等の政治勢力の都政版と言わざるを得ない。
     舛添都知事は、5月20日の記者会見で、政治資金問題についての調査を第三者の弁護士等に委ねるとして、疑惑についての説明をいっさい行なわなかった。自ら疑惑を明らかにする意思もない以上、まず都知事を辞職するべきである。そして、新たな都知事のもとで、オリンピックの見直しも含めて住民本位の都政への転換を果たすことを、強く求めるものである。
2016年5月25日
自由法曹団東京支部長 須藤 正樹
 
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