自由法曹団 東京支部
 
 
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団支部の活動紹介

マイナンバー制度の拡大に反対しその廃止を求める決議

 マイナンバー(個人番号)とは、政府によって日本国内に住民票を有する者につけられる12桁の番号である。2015年10月から、5500万の対象世帯へマイナンバー通知カードが郵送されている。
 マイナンバーの利用範囲は 当面、@税、A社会保障、B災害対策、の3分野である。
 さらに、昨年、利用範囲を拡大する法改定がなされた。
 C金融分野は2018年1月以降預金口座にも適用される。当面利用は預金者の任意だが、政府は、2021年度以降に義務化をめざしている。D医療分野では、健康診断情報、予防接種履歴の管理に利用される。Eその他の分野では、個人番号カードが国家公務員の身分証明書と一体化され使用が強制される。
 さらに政府は、健康保険証との一体化、コンビニ等のポイントカードとの一体化などを検討している。
 このマイナンバー制度は、法律では、行政の効率化・住民の利便性向上のためとされているが、実際は、個人番号カードをつくれば、福祉・社会保障・税務などの場面で、納税証明書や住民票といった書面を出さないでよいといった程度である。
 その反面、弊害は大きい。マイナンバー制度によって秘匿性の高い情報が官民に集約されることになるが、システム上、漏洩の危険が避けられない。特に、政府は、個人番号カード(個人番号カードのICチップの空き領域の利用)とマイナポータル(ワンストップサービスの窓口となるインターネットサイト)を国家戦略として推進しているが、個人情報がパソコン上に集約され悪用されやすくなる。また、身分証明書、健康保険証、印鑑登録証明書等々が個人番号カードにまとめられれば、個人番号カードの所持が事実上強制され、日常的に持ち歩く機会が増え、不正取得の機会を増大させることになる。その結果、個人番号カードのコピーを偽造するなどのなりすましの危険もある。マイナポータルのサイト上でもなりすまし、個人情報をのぞき見たり勝手に手続をしたりできてしまうのである。こうした弊害があるため、アメリカ、イギリス、韓国では、既にマイナンバー制度が廃止ないし制限されている。
 マイナンバーよりも対象情報が少ない住基ネットについて、金沢地裁平成17年5月30日判決は、「デジタル情報は、半永久的に劣化しないで保存できること、瞬時に複製、伝達できて、短時間に爆発的に増殖させることができること、複製されても、そのことが容易には判らず、伝達先を把握することはほとんど不可能であること、書き換えも用意であり、書き換えられていることが外観上は判らないこと等の特殊性があり、…」として自己情報コントロール権を含むプライバシー権の侵害であると判断したが、マイナンバー制度にもその判示はまさしく妥当する。
 このような違憲性まで指摘されているマイナンバー制度を政府が強行した真のねらいは、戦争立法や盗聴法・司法取引法案と一体の戦争国家・監視社会体制づくりである。
 例えば、警察は「刑事事件の捜査」のためとすれば、情報提供ネットワークシステムを使用せずに特定個人情報を収集することが法律上可能となる。それは、第三者機関である個人情報保護委員会のチェックを受けることもなく、マイナポータルのサイトでも警察の把握した情報を知ることができない。
 さらに、個人情報防止制度の整備などで中小企業に膨大な経費負担を悖らす反面、3兆円とも言われるマイナンバー市場の利益を一部のIT企業にもたらすという政官財癒着の利権政治によるものと言う他ない。
 現在、全国5地裁原告数156名でマイナンバー違憲訴訟が闘われているが、自由法曹団東京支部は、これを支援する。
 マイナンバーは、現在は、税金や社会保障の手続に際して使用しなくても罰則がないのであるから、これをできる限り使用しないように呼びかける。
 さらに、マイナンバーの使用対象の拡大や罰則の導入を阻止し、マイナンバー制度の廃止を求めていくことを表明するものである。

2016年2月27日
第44回自由法曹団東京支部総会
 
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