自由法曹団 東京支部
 
 
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団支部の活動紹介

安倍政権による労働法制大改悪に反対する決議

  1. 安倍政権は、「世界で一番企業が活動しやすい国を目指す」として、労働者派遣法大改悪、労働時間法制大改悪、解雇の金銭解決制度の導入による解雇規制の緩和等、「岩盤規制」と位置付ける労働分野の規制破壊に邁進している。
  2. 安倍政権は、2015年通常国会において、大きな反対の声を押し切って、既に2度廃案となっていた派遣法「改正」案を強行採決し、成立させた。
     「改正」法は、同一組織単位における同一有期派遣労働者の派遣受入期間につき3年の上限を設けるが、組織を変えることで同一労働者を同一事業所で働かせることができる、派遣先は3年の受入期間後、派遣労働者を入れ替えることにより、組織単位で永続的に派遣労働者を利用できるという内容となっている。他方で、「改正」法に盛り込まれた雇用安定措置やキャリアアップ措置には派遣労働者の正社員化を促す実効性はなく、また均等待遇原則ならぬ均衡待遇原則では派遣労働者の低処遇改善を促す実効性に乏しい。
     今回の「改正」は、常用代替防止の基本原則を事実上否定し、低賃金かつ不安定雇用の派遣労働者を急増させることは必至であって、断固容認されるものではない。派遣労働者の雇用安定と労働条件改善のために、正社員化につながる派遣制限期間の導入、派遣対象業務の縮小、均等待遇原則の導入等を内容とする派遣法の抜本改正こそが今求められている。
  3. 安倍政権は、2015年通常国会に、「高度プロフェッショナル制度」の創設や企画業務型裁量労働制の拡大等を盛り込んだ労働基準法等「改正」案を提出したものの、審議入りできないまま継続審議となった。
     「高度プロフェッショナル制度」は、一定の労働者に対して労働時間規制の適用を全て除外して、時間外・休日・深夜の割増賃金の支払義務を一切なくすものであり、また、企画業務型裁量労働制の対象業務範囲の拡大も極めて広範な労働者への適用を許す危険性を孕んでいる。かかる制度導入によって、「1日8時間・1週40時間」という労働時間法制の大原則は根底から破壊され、現状ですら深刻化している長時間過密労働が更に野放しとなり、過労死・過労自殺が増加することとなる。
     今必要なことは、時間外労働の上限規制の強化、監督行政の機能強化等によって、過労死、過労自殺、メンタルヘルスを引き起こしている長時間労働を撲滅することである。
  4. 再興戦略2014において、「予見可能性の高い紛争解決システムの構築」として金銭解決制度につき諸外国の例を研究し、2015年度中に検討を進めるものとされた。そして、2015年6月に閣議決定した再興戦略2015と「規制改革実施計画」において解雇の金銭解決制度に関する有識者会議の創設が提言され、10月29日から厚生労働省で労働紛争解決システム検討会が実施されている。
     しかし、そもそも解雇の金銭解決制度は、無効となる解雇であっても金銭さえ払えば当該労働者を企業から排除する手段を企業に与えるもので、解雇権濫用法理を形骸化させるものにほかならない。また、これにより労働者としての当然の権利を行使する者や労働組合員を排除することも可能となり、労働者の権利を根本から破壊する危険性がある。
     したがって、金銭解決制度の導入を決して許してはならず、集会等により反対の声を広げる活動、検討会に参加している労働者側委員を支える活動を行っていく必要がある。
  5. 自由法曹団東京支部は、このような労働者の雇用のあり方を一変させ、全ての労働者の暮らしを壊す労働法制改悪に断固として反対し、安心して働ける人間らしい労働を実現すべく、全力を上げる決意である。
2016年2月27日
第44回自由法曹団東京支部総会
 
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