自由法曹団 東京支部
 
 
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団支部の活動紹介

自民党国会議員勉強会における言論弾圧発言に厳重に抗議する

2015年7月29日
自由法曹団東京支部
支部長 須藤 正樹

 加藤勝信官房副長官や、首相側近の萩生田光一総裁特別補佐ら安倍晋三首相に近い自民党の若手議員約40人が25日、憲法改正を推進する勉強会「文化芸術懇話会」の初会合を党本部で開いた。
 講師として出席した前NHK経営委員で作家の百田尚樹氏は、沖縄の地元紙が政府に批判的だとの意見が出たのに対し、「沖縄の二つの新聞はつぶさないといけない」と発言した。さらに百田氏は米軍普天間飛行場の成り立ちについて、「みんな何十年もかかって基地の周りに住みだした」と指摘した上で、基地騒音訴訟に触れ、「そこを選んで住んだのは誰だと言いたい」と、全く事実に反する自己責任論を展開した。
 加えて、百田氏は「米兵が犯したレイプ犯罪よりも、沖縄県全体で沖縄人自身が起こしたレイプ犯罪の方がはるかに率が高い」との、人口比からすれば明らかに事実無根の発言をした。
 沖縄の地元2紙については、出席議員も「左翼勢力に完全に乗っ取られている。沖縄の世論のゆがみ方を正しい方向に持っていく」と主張した。
 さらに、安保関連法案を批判するメディアの報道について、大西英男衆院議員が「マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなるのが一番。文化人が経団連に働きかけて欲しい」「悪影響を与えている番組を発表し、そのスポンサーを列挙すればいい」などと発言していた。
 有志による非公式な会であっても、政治権力を掌握する与党議員の勉強会であるから、そこでなされたこれらの発言は、報道機関に圧力を加えて萎縮させる、憲法21条が保障する報道の自由・言論の自由を侵害する発言であり、国会議員の憲法尊重擁護義務に違反するものであって到底許されない。
 ところが、6月26日の安全保障関連法案を審議する衆院特別委員会で、民主党の寺田学議員に、百田氏の話を聞いた感想を求められた加藤副長官は、「大変拝聴に値すると思った」と答えた。安倍首相は「言論の自由こそが民主主義の根幹であり、当然尊重されるべきものだ」と一般論で応じるばかりであった。
 言論弾圧であって許されない、との報道各社をはじめとする各界からの強い批判の前に、その後、自民党執行部は勉強会「文化芸術懇話会」代表の木原稔青年局長を更迭し、1年間の役職停止とし、「マスコミを懲らしめる」と広告主への圧力行使に言及した発言した3議員は厳重注意処分とした。さらに、安倍首相も陳謝した。
 しかし、自民党や安倍首相のこれらの対応は、戦争法案の審議を促進するための取り繕いに過ぎないものである。
 実際、党執行部から厳重注意処分を受けたた大西英男衆院議員は、3日後には再び同趣旨の発言をし、2度目の厳重注意処分を受けた。
 本年4月にも、自民党情報通信戦略調査会がテレビ朝日やNHKの放送内容に文句をつけ、放送法上の権限がないにもかかわらず、両社の経営幹部を呼びつけたばかりである。
 当自由法曹団東京支部は、これに対して、自民党本部に抗議声明を持参して申し入れをしたが、自民党はこの申し入れを全く受け止めていなかった。むしろ現在の自民党の本質がここに表れていると言うべきである。すなわち、憲法違反との指摘を無視して戦争法案をごり押しする態度と今回の言論弾圧は表裏をなすものであり、安倍政権の進める戦争国家づくりの一環である。
 自由法曹団東京支部は、治安維持法下の言論弾圧に抗して闘った伝統を有する法律家団体として、自民党と安倍政権によるこうした言論の自由の侵害に対して厳重に抗議するものである。

 
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