自由法曹団 東京支部
 
 
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団支部の活動紹介

都立中高一貫佼・特別支援学校の教科書採択に関する請願

東京都教育委員会  教育長 中井 敬三 様

2015年7月3日
東京都文京区関口1-8-6メゾン文京関口U 202号
自由法曹団東京支部 支部長 須藤正樹

 日頃よりの東京都の教育行政へのご尽力に感謝申し上げます。
 私たち自由法曹団は1921年(大正10年)に神戸における労働争議の弾圧に対する調査団が契機となって結成された弁護士の団体です。目的は「基本的人権をまもり民主主義をつよめ、平和で独立した民主日本の実現に寄与すること」で、憲法と人権・平和と民主主義の問題にたずさわる弁護士が約2100名登録し、全国全ての都道府県で活動しています。東京支部は約500の弁護士がおります。
 さて本年7月から8月にかけて、2016年度から4年間使用される中学校教科書の採択が各地の教育委員会で行われることになっています。私たちは法律家として、憲法・人権を扱う公民教科書や歴史認識・戦争責任にかかわる歴史教科書に強い関心を持っております。
 ところで、東京都では2001年以来、都立中高一貫佼および特別支援学校について、歴史教科書および公民教科書に扶桑社・自由社・育鵬社の教科書を採択しております。しかしこれらの教科書については研究者・保護者・教師・都民等から多くの問題点が指摘されております。私たちも本年6月、育鵬社版の教科書についての意見書(「弁護士による育鵬社の公民・歴史教科書の問題点」)を発表しました。多くの人権をめぐる問題や社会問題に直接かかわっている法律家の立場から、公民教科書のすべての内容に検討・批判を加えた意見書です。また、この意見書のうち「育鵬社版歴史教科書の問題点」と題する論考では、歴史の見方や大日本帝国憲法の位置づけと戦争をめぐる問題など、歴史教科書についても法律家として黙過できない中心的問題点について検討しています。
 詳細は意見書に譲りますが、公民・歴史のいずれも教科書も根本的な誤謬や歪曲をはらんだもので、教科書としての適格性を有していません。また内容を詳細に分析すれば、教育基本法や学習指導要領にも反する内容が多々あります。とりわけ法律家として見過ごせないのは、育鵬社版の公民教科書では、憲法の三原則である国民主権、基本的人権の尊重、平和主義を正しく学習できないことです。これでは、主権者として必要な知識を習得したり、社会の仕組みをきちんと理解することができません。
 教科書の内容は「日本国憲法の精神に則り」(教育基本法前文)、「個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神」と「他国を尊重し、国際平和の発展に寄与する態度」を養い(同2条)、「平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた」人間を育てるものであること(同1条)が必要です。したがって、教科書の内容は先の戦争の反省を欠いたり、偏狭なナショナリズムが強調されたり、日本国憲法を蔑ろにするものであってはなりません。また教科書の採択にあたっては政治に左右されることなく、独立した教育委員会が生徒に直接指導にあたる教員や各分野の専門家、保護者等の意見を尊重することが必要です。そして何より、その採用手続には透明性及び公正性が求められます。
 こうした考えから、私たち自由法曹団東京支部では、都立中高一貫佼および特別支援学校の教科書採択に関して下記の事項を請願いたします。

請願事項

  1. 教科書採択に際しては、教育現場において生徒の状況を最もよくつかんでいる教職員の意見及び保護者等の意見を尊重すること。
  2. 教科書採択に際しては、それぞれの教科書を選んだ理由を明らかにするなど、公正、公平、公開が確保された採択をすること。
  3. 歴史及び公民の教科書採択については、日本国憲法を軽視したり過去の戦争を肯定するなどの歴史観にそった教科書、学習指導要領に反した教科書(とりわけ育鵬社及び自由社の教科書)を採択しないこと。
以上
 
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