自由法曹団 東京支部
 
 
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支部の意見書・声明[2015年]

都立高校「日の丸・君が代」強制再雇用拒否第1審判決に対する控訴の断念を求める声明


  1. 東京地方裁判所は、2015年5月25日、東京都教育委員会が都立高校の教職員22名に対し、卒業式等において、「君が代」斉唱時に、「日の丸」に向かって起立・斉唱しなかったことを理由に、定年退職後の再雇用職員ないし日勤講師としての採用を一律に拒否したことを違法と認め、設置者である東京都に対し、採用された場合の1年間分の賃金額を賠償させる判決を言い渡した。
     自由法曹団は、本判決が不起立教職員の再雇用拒否を違法と認定したことを強く支持し、原告ら関係者の努力に心より敬意を表するとともに、東京都に対し、この判決内容を重く受け止め、控訴を断念し、教育現場における「日の丸・君が代」強制の政策を転換することを強く求める。
  2. 2003年10月23日、東京都教育委員会は、教員らに対し、卒業式などの式典において、「君が代」斉唱時に「日の丸」に向かって起立し、斉唱することなどを強制する内容の通達(10.23通達)を出し、以降、都立学校の卒業式などの「君が代」斉唱時に起立しなかった教員らに対し、一律に、懲戒処分および定年退職後の再雇用職員等への採用拒否などの不利益を課してきた。
     自由法曹団は、これまで、このような都による教育現場における「日の丸」・「君が代」の強制に強く反対し、教育現場における「思想・良心の自由」、「教育の自由」の保障の実現を求めてきた。
     本判決は、10.23通達の発出に由り、それまで教員らの不起立等を問題としてこなかった実態があるにも関わらず、同通達の発出後に、不起立等のみを理由として、一律に勤務不良として不採用とすることにつき「原告らの再雇用の合理的な期待」を侵害するものと判断し、東京都の主張を一蹴している。
     さらに、本判決は、10.23通達違反を理由として不採用とすることは「思想信条等に従ってされた行為を理由に大きな不利益を課すこと」であり「とりわけ慎重な考慮を要する」として、憲法で保障される原告らの「思想・良心の自由」を重く配慮するよう求めている。
  3. 本判決は再雇用の選考にあたっては「教職員の長年培った知識、技能、経験、学校教育に対する意欲など」の多種多様な要素を考慮すべきことを求めるとともに、「定年退職者の生活保障」「知識及び経験等の乱用」などの再雇用・非常勤教員の制度趣旨に反するとして再雇用拒否を批判している。
     本判決が「君が代」斉唱時の不起立を理由とした本件採用拒否を都教委の裁量権の逸脱・濫用にあたり違法であると判示したことは、原告らの思想良心の自由を守る不屈なたたかいの成果である。同時に都教委の「日の丸」・「君が代」の強制という頑迷な政策が教育現場を混乱させていることに対し、一定の「歯止め」を掛けたものと評価される。
  4. 自由法曹団は、東京都に対して、本判決の内容を重く受け止め、控訴を断念し、さらに、教育現場に対する「日の丸」・「君が代」強制の政策を転換し、教育現場における「思想・良心の自由」及び「教育の自由」の保障を実現することを強く求める。

2015年5月29日
自由法曹団
 団長 荒井 新二
自由法曹団東京支部
 支部長 須藤 正樹

 
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