自由法曹団 東京支部
 
 
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支部の意見書・声明[2015年]

政権与党による報道内容への介入を強く非難し、報道の自由を守り抜く声明


 2015年3月27日、テレビ朝日の「報道ステーション」のゲストコメンテーターをしていた古賀茂明氏は、同番組の放送中、同局の早川会長らの意向で「今日が最後(の出演)」「菅官房長官をはじめ官邸の皆さんからバッシングを受けてきた」と発言した。
 これに対して、自民党は、「クローズアップ現代」で「過剰な演出」が指摘されたNHKと併せ、両局の幹部を呼んで事情聴取をした。自民党は、放送法第4条3号に「報道は事実を曲げないですること」と規定されていることをその理由としている。
 しかし、これは放送法の趣旨をねじ曲げた、言論・表現の自由に対する権力のあからさまな介入であり、到底許されない。また、それに応じた両局の幹部の態度も問題である。
 すなわち、放送法は第1条2号でその目的を以下の通り定めている。「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること」
 さらに第3条には「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない」と規定している。
 これらは、戦前の日本放送協会が権力の宣伝機関になっていたことへの反省を踏まえ、放送局が権力から独立したものになるように、権力の介入を防ぐべく規定したものである。
 自民党には「法律に定める権限」がないが、政権政党として総務省の有する放送免許の許認可権を放送局に意識させることとなるから、自民党による事情聴取は放送法第3条が禁止する「干渉」に当たることは明らかである。
 そもそも古賀氏は本年1月23日の「報道ステーション」で「I am not ABE」と言った後、首相官邸から番組に抗議のメールが来たことを、朝日新聞の取材に対して明らかにしている。「菅官房長官を始め官邸の皆さんからバッシングを受けてきた」との古賀氏の発言は「事実を曲げたもの」には当たるとは言えない。また、「I am not ABE」と発言するような政権批判の言論を尊重することこそ憲法21条に規定する表現の自由の保障であり民主主義の基盤である。放送法4条2号は「政治的に公平であること」を規定するが、公平とは、日本国憲法の理念に合致することをいうのであり、古賀氏は日本国憲法の観点から安倍政権の人質問題への対応や報道への介入を批判したのだから、その言動は公平に合致すると言えるのである。
 このような政権政党の報道への介入は、放送法および憲法に違反し、我が国の自由と民主主義を破壊する暴挙である。自由法曹団東京支部は、戦前から自由と民主主義の実現を求めて活動してきた法律家団体として、自民党に対してこのような行為を二度と繰り返さないよう強く求めるとともに、報道各社に対して、こうした介入をはね退けて自主自律の立場にたった報道を強めて行くよう、要請するものである。

2015年5月14日
自由法曹団東京支部
支部長 須藤 正樹

 
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