自由法曹団 東京支部
 
 
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支部の意見書・声明[2015年]

盗聴法の拡大と司法取引の導入を許さない決議


  1. 法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」(特別部会)は、2014年7月9日、「新たな刑事司法制度の構築についての調査審議の結果」(答申案)を委員の全員一致で決定した。法制審議会は同年9月18日に開催された総会において特別部会の答申案を承認し、同日、松島法務大臣(当時)に答申した。
     答申は取調べの可視化対象事件を全事件のわずか3%に限定し、検察官手持ち証拠の開示を一覧表の開示にとどめる一方、盗聴法の拡大と司法取引制度の導入を提起している。答申の内容は、冤罪根絶のための刑事司法制度改革という特別部会の設立使命に反し、捜査機関にとって都合の良い捜査手法を容認する極めて問題のある内容であり、到底容認することは出来ない。
  2. 答申は、現在、組織的殺人や組織的銃器犯罪等の4類型の重大犯罪に限定されている盗聴法の対象犯罪を、窃盗、強盗、詐欺などの財産犯を含む一般犯罪にまで拡大することを提起している。さらに、答申は通信傍受の「合理化・効率化」と称して、通信事業者の立会を不要とする等の盗聴法の適用要件を緩和することを提起している。捜査機関の盗聴に対する唯一のチェック機能を形骸化させ、捜査機関がいつでもどこでも盗聴を行えるよう、盗聴法を捜査機関にとって使い勝手の良い法律へ変容させることを狙ったものである。
     盗聴法は、憲法が保障する通信の秘密を侵害するものであり、国民のプライバシーを侵害する憲法違反の法律である。答申の内容が実現されれば、捜査機関が、犯罪と全く関係のない膨大な市民の通信データを傍受することとなり、通信の秘密やプライバシーが日常的かつ広範に侵害され、監視社会への道が開かれることは明らかである。このような盗聴法の拡大は、断じて許されるものではない。
  3. さらに、答申は「捜査・公判協力型協議・合意制度」と称し、司法取引制度の導入を提起している。導入しようとする司法取引制度は、被疑者・被告人が「他人の犯罪事実」について供述、証言をする見返りとして自身の罪を免除ないし軽減してもらう「捜査協力型」の司法取引制度である。
     これは他人の犯罪についての密告を奨励するものに他ならず、冤罪を生む温床になりかねない。虚偽供述の歯止めとして設けるとされる「虚偽供述罪」も、公判段階での真実の供述を妨げるものであり、弊害防止のための歯止めとして機能するものではない。刑事弁護制度をも大きく変質させる危険性を持つこのような司法取引制度の導入は、断固として阻止するべきである。
  4. 安倍政権は「戦争をする国づくり」を進めるため、国民の監視と情報統制の確立を目論んでいる。答申が提起する盗聴法の拡大と司法取引制度の導入は、このための治安立法に他ならない。
     自由法曹団東京支部は盗聴法の拡大と司法取引制度の導入に断固として反対し、弾圧を許さず、「戦争をする国づくり」を阻止するために全力を挙げて奮闘する決意である。

2015年2月28日
自由法曹団東京支部 第43回支部総会

 
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