自由法曹団 東京支部
 
 
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支部の意見書・声明[2013年]

猪瀬東京都知事への徳洲会からの資金提供について


  1. 東京都の猪瀬直樹知事は、医療法人「徳洲会」グループから5000万円を受け取っていたことを認めた。猪瀬氏によれば、昨年11月に徳洲会の徳田虎雄前理事長を訪ねて知事選立候補の挨拶をし、その後、徳洲会側から申し出があって徳田毅衆議院議員から5000万円を現金で直接受け取ったが、徳洲会が今年9月に公職選挙法違反容疑で強制捜査を受けた後、秘書に指示して返却したとのことである。
  2. 猪瀬氏は、11月22日の午後3時からの記者会見で、5000万円は個人の借り入れであって、選挙資金ではないと弁明した。
     しかし、猪瀬氏は、同日午後1時すぎの記者団の取材には、「資金提供という形で応援してもらうことになった」と発言し、選挙の応援で5000万円の資金提供を受けたことを認めていた。5000万円が選挙資金でないという認識があったのなら、「資金提供という形で応援してもらうことになった」などと発言するはずがない。猪瀬氏が5000万円を選挙資金と認識していたことは、この発言から明らかである。
     また、知事選出馬の挨拶後に資金提供がされたこと、初対面にもかかわらず5000万円もの大金が提供されたこと、無利子・無担保で返済期限の定めもない「破格」の条件であること、個人としての借り入れであれば都の資産公開条例に基づいて資産報告で公表する義務があるにもかかわらず報告書に記載してなかったこと等の一連の事実も、5000万円が選挙資金であることを裏付けている。
     さらに、5000万円もの大金が金融機関を経由せず現金で直接手渡され、金融機関に預金されることなく妻名義の貸金庫に保管されていたことや、徳洲会が強制捜査を受けた後に返却した事実は、個人の借り入れとしてはあまりに不自然である。徳洲会からの資金提供は公的資料には全く表れていない。猪瀬氏が1億円の資金提供を要請していたとの報道や、徳田虎雄氏が資金の提供前に徳田毅氏に「足がつかないようにしろ」と指示していたとの報道もあり、今回の5000万円の資金提供は、表に出さない選挙資金、いわゆる「裏献金」であったという強い疑いを生じさせる。
     選挙資金は公職選挙法に基づく選挙運動費用収支報告書に記載する義務があり、政治団体の活動のための借入金は政治資金収支報告書に記載する義務があるが、猪瀬氏の選挙運動費用収支報告書および政治資金収支報告書のいずれにも今回の5000万円は記載されていない。
  3. 東京都は2020年オリンピック・パラリンピックの開催都市として、スポーツを通じた平和でよりよい世界の実現を、世界に向けアピールする立場にある。そのトップが、5000万円という巨額の資金提供について不可解・不明朗な弁明に終始することは、実に恥ずべきことである。
     猪瀬氏は、資金提供についての様々な疑問、未解明な問題について、誠実に説明を尽くす責任があり、その責任が果たせないのであれば、潔く東京都知事の職を辞すべきである。

2013年11月26日
自由法曹団東京支部 支部長 宮川 泰彦

 
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