自由法曹団 東京支部
 
 
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支部の意見書・声明[2012年]

三鷹UR団地弾圧事件に抗議し、選挙運動・政治活動の自由の拡大を求める声明


  1. 逮捕から釈放へ
     2012年12月8日午後1時ころ、東京都三鷹市下連雀5丁目8番所在のUR(都市再生機構)団地1号棟において、「人にやさしい東京をつくる会」(つくる会)の法定ビラを配布していた70歳の男性(A氏)が、住民によってビラ配布を妨害されたうえ、「住居侵入」容疑で逮捕された。警察による逮捕は、車両3台、捜査員約10名を動員した異常なものであった。
     この逮捕に対し、弁護人や三鷹市民が強く釈放を要求し、「つくる会」も逮捕に抗議して早期釈放を求める声明を発表した。にもかかわらず、検察官は住民に対する「傷害」容疑を追加して勾留請求を行った。
     12月11日、裁判官は勾留請求を却下し、拘禁を受けていた男性は釈放された。
  2. 「住居侵入」「傷害」は虚構
     A氏が立ち入ったUR団地1号棟は、西側・東側の出入口および北側階段から自由に出入りできる構造になっており、A氏が立ち入った東口には「立入禁止」の表示はされていない。また、この東口は多くの住民が日常的に出入りしている出入口であって、A氏が特殊な出入口を選んだわけではない。A氏の行為は、「管理権者の意思に反して立ち入」(最高裁昭和58年4月8日判決)ったものではなく、住居侵入行為に該当しない。
     また、A氏は見咎めた住民に腕をつかまれ、羽交い絞めにされていた。A氏は住民の暴行から逃れるために腕を引いただけであり、暴行行為はまったくなく、傷害罪が成立する余地はない。
     逮捕や勾留請求は、違法不当なフレームアップ以外のなにものでもない。
  3. ねらいは選挙運動の妨害
     本件は、東京都知事選挙が終盤を迎えようとするもとで、「つくる会」が擁立し、自由法曹団や東京支部が支援する宇都宮けんじ候補の選挙活動にフレームアップをしかけたもので、選挙運動の妨害をねらった政治弾圧にほかならない。
     また、公安警察の違法な捜査活動によってつくりあげられた国公法弾圧堀越事件について、最高裁が無罪を宣言した翌日に発生した事件であり、公安警察の「リベンジ」の性格を色濃くもっている。
     公職選挙法によって選挙運動や政治活動が厳しい制限を受けるもとで、法定ビラの配布は市民に残されたほとんど唯一の文書活動となっている。法定ビラ配布に弾圧を加えることは、富や権力を持たない市民の選挙運動や政治活動の自由を、根こそぎ奪いとるに等しい。
     いかなる意味からも、三鷹UR団地弾圧事件は、断じて許されてはならない。
  4. 自由への挑戦、最高裁判決すら蹂躙
     2000名余の弁護士で構成する自由法曹団は、多くの団体や市民とともに、選挙運動や政治活動の自由を守る活動を続け、弾圧とたたかい続けてきた。
     ポスティングに住居侵入罪を適用した葛飾ビラ配布弾圧事件では、一審で無罪が宣告され、有罪となった最高裁でも、「よく目立つ立入禁止の表示があるマンションの7階から3階まで入った行為」が、有罪の理由とされた(最高裁平成21年11月30日判決)。
     また、ポスティングを国家公務員法違反とした国公法弾圧堀越事件では、最高裁は無罪とした二審判決を維持し、「国民は、憲法上、表現の自由(21条1項)としての政治活動の自由を保障されており、この精神的自由は立憲民主政の政治過程にとって不可欠の基本的人権であって、民主主義社会を基礎付ける重要な権利である」と宣言した(最高裁平成24年12月7日判決)。本件発生の前日のことである。
     三鷹UR団地弾圧事件は、選挙運動や政治活動の自由を求めるたたかいへの真っ向からの挑戦であり、最高裁判決すら蹂躙するものである。
  5. ただちに「嫌疑なし」を認めて不起訴に
     このような三鷹UR団地弾圧事件の勾留請求が却下されたのは、当然のこととはいえ、市民の良識が裁判所を動かしたものとして高く評価をすることができる。それに対して、「フレームアップ」を仕かけて選挙活動を妨害しようとした警察や検察官は、厳しく批判されなければならない。
     自由法曹団と2000名余の団員弁護士は、警察と検察官に強く抗議し、A氏をただちに「嫌疑なし」の理由をもって不起訴にするよう要求するとともに、こんごとも選挙運動・政治活動の自由を拡大発展させるために、全力でたたかい続けるものである。

2012年12月12日
自由法曹団
 団長  篠原義仁
自由法曹団東京支部
 支部長 藤本 齊

 
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