自由法曹団 東京支部
 
 
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支部の意見書・声明[2012年]

衆議院比例定数削減に反対し国民の意見を反映する選挙制度を求める決議


 民主党は、定数是正を求めた11年3月の最高裁判決を踏まえて、衆議院の選挙制度について、小選挙区5減、比例選挙区80減の定数削減を主張している。
 しかし、そもそも日本の国会議員数は西洋諸国と比較しても人口比で3分の1程度である。国民の民意をくみ取り、これを国会の場に反映させて、最良の選択を行うのが国会議員の主たる役割であり、国会議員の数は、人口に対比して決するのが大きな目安になるのは当然である。従って、日本の国会議員の数は決して多いとはいえないのである。
 そもそも1994年に小選挙区制が採用されてから、政治家の質の劣化が問題とされるようになっている。これは、小選挙区で当選するために知名度のある「票の取れる」候補者を、政党の執行部が選定することになり、政治家の「連続性」が確保できなくなり、「政策」に通じ、国会で議論できる政治家が育たなくなっていることに由来する。小選挙区制の弊害が表れている。また、小選挙区制は制度上当該「選挙区」から1名しか当選しない以上、一定程度の力のある候補者が3名以上立候補した場合に、相対多数の得票で当選するために、多量の死票を生じることとなり、国民の意見を正確に反映することはできず、憲法の国民主権理念に適合しない。このように、小選挙区制は、運用上も制度上も多大な問題を含んでおり、その発祥国であるイギリスにおいてさえ改革を求める声が強まっている。
 衆議院の比例区における選挙は、国民の少数派の意見もできるだけ正確に反映することができ、価値観が多様化した国民の意見を政治に反映するのに適している。国民主権に即した制度であり、少数政党によるマイノリティーの権利保護に適している。現代社会においては比例代表制度こそ望ましいと言える。
 民主党政権は、税と社会保障の一体改革と称して消費税増税をもくろんでおり、そのために「身を切る」と称して比例定数80削減を主張している。しかし、議員定数はそもそも過少であるうえ、比例定数を80も削減する正当性は何ら説明されていない。「身を切る」のであれば、議員歳費を平等に削減する、政党助成金を削減するなどの方が全員で確実に「身を切る」ことができる。議員定数を削減することは国民と国会のパイプを細らせることであり、国民の意見が国政に反映しにくくなりことは明らかであり、国民主権に悖る結果となる。
 自由法曹団東京支部は、憲法のよって立つ国民主権原理を守るために衆議院比例定数削減に強く反対し、国民の声が国会に出来る限り正確に反映できる選挙制度を目指すものである。

2012年2月25日
自由法曹団東京支部第40回支部総会
 
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