自由法曹団 東京支部
 
 
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支部の意見書・声明[2012年]

2020年東京オリンピック招致活動に反対する決議


 石原都政は,2020年オリンピックの東京招致に名乗りを挙げた。
 そもそもオリンピックは,スポーツを通じて平和,民主主義,人権尊重の精神を培うというオリンピズムの精神を実現する世界的な運動である。東京都は2016年オリンピック開催に立候補し,落選したが,その開催計画と招致活動は,選手や観客の健康や安全への配慮が欠けるなどオリンピズムの精神に立脚しているとは到底いえないものであった。都は,その落選時の招致活動の検証と敗因分析を十分にしないまま再度の立候補をしており,それを許してはならない。
 都は,2012年1月13日,開催都市立候補に必要な申請ファイルをIOCに提出し,「ニッポン復活」をテーマに,東日本大震災の復興を盛り込んだ開催動機をアピールした。しかし,申請ファイルによれば,被災地での開催は,サッカーの予選を宮城スタジアムで行うことのみである。それが被災地の復興に直結するとは言い難い。
 また,われわれ自由法曹団東京支部は,東京都の開催計画について,水質基準をクリアしていないお台場海浜公園の海域でのスイムの実施や,三方が海に囲まれ観客の交通・輸送や災害時の避難に問題がある晴海のメインスタジアムについて問題点を指摘してきた。しかし,今回の計画においても,お台場海浜公園での実施に変更はなく,選手の健康安全への配慮はない。メインスタジアムは国立競技場に変更したものの,他方で,晴海には選手村を建設する計画となっており,選手の交通や災害時の避難についての配慮が乏しいといわざるを得ない。
 2016年招致では,招致活動経費として,148.5億円を費やした。招致委員会は,招致活動を総括した「2016年大会招致活動報告書」を発表したが,その内容は,招致活動の意義と成果を強調するばかりであり,巨額を投じた招致活動経費の内訳が明らかにされておらず,事業効果の分析も全くされていない。経費は税金から100億円,民間寄付50億円で賄う予定であったが,実際の民間寄付は41.6億円にとどまった。その結果,活動経費は6.9億円の赤字となり,最終的に電通から同額の借入金をしてまかなった。この借入金は,結局,2020年招致委員会がスポンサー収入で清算している。2020年招致活動は,当初から2016年の負債をも負担しているのである。招致委員会は,2020年の招致活動経費は2016年大会時に対し半減すると公表している。しかし,半減としても75億円である。シカゴは単年度ではあるものの招致経費は70億円とされており,75億円は決して節減したとは言えない。むしろ2016年招致の費用が異常に高額であったことを際だたせるものである。
 2011年3月の大震災を経験し,震災と原発事故の不安,放射能汚染の危険が払拭できていない時点で立候補をしても,国内外の賛同が得られるとは到底考えられない。都がオリンピック開催のために4000億円もの積立金を有しているが,これをまず復旧復興と放射能汚染対策,震災に強い街造り防災減災都市の実現のためにこそ充てるべきである。
 そうした復旧復興を進めるなかで,都民国民から五輪開催の意欲が上がるなら,そのときにこそ五輪招致に向かうべきである。その場合には,2016年時の計画よりも無理無駄をなくしたオリンピック開催計画を策定していくべきである。
以上から,自由法曹団東京支部は,東京都の2020年東京オリンピック招致に反対するものである。

2012年2月25日
自由法曹団東京支部第40回支部総会
 
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