自由法曹団 東京支部
 
 
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支部の意見書・声明[2012年]

福島原発被害について、東電と国に謝罪と原状回復及び完全賠償を求める決議


  1. 東京電力と国は違法行為責任を認め謝罪すること
     3月11日の東日本大震災に引き続き発生した福島第一原発事故は、2台の非常用ディーゼルエンジンを同じ海抜高度に設置していたこと、09年6月の経済産業省の審議会で、委員から貞観地震を考慮した安全対策を強く求められていたこと、長時間の全交流電源喪失を想定したマニュアルが作成されていなかったことなどから見て、東電の免責はありえず違法行為責任は明確であると言わざるを得ない。
     にもかかわらず、東電は、二本松市でゴルフ場を経営業者が東電に対し除染等を求めた仮処分手続の中で「放射性物質は無主物」「放射性物質は附合した」と主張し、また、「補償」という用語の使用を完全には放棄していないなど、違法行為責任を明確に認めない。
     東電は、まず、このような誤った認識を改め、なんら非難されるところのない被害住民の心情を理解して、違法行為責任を負うことを明確に認めた上で、被害を被った住民に謝罪すべきである。
     また、国も、「国策民営」の名の下、電力会社と一体となって原子力発電事業を積極的に推進してきたのであり、その安全性基準が不十分であり、適切な規制権限行使を怠った違法性が認められるのであるから、違法行為責任を認めた上で、被害を被った住民に謝罪することを求める。そのうえで、被害を以下に救済すべきかを真剣に検討すべきである。
  2. 東京電力と国は徹底した除染を行うこと
     11年11月、政府は、年間放射線量が1ミリシーベルト以上の地域の除染を、国が責任を持って行う基本方針を閣議決定したが、自由法曹団の11年10月22日決議にもあるように、安全性を確保できる基準を明確にし、国の負担において徹底的に行うべきである。しかるに、責任ある十分な除染も行わずに事故後わずか1年も経過しないうちに帰還を打ち出すなどという方向性は極めて問題と言わざるを得ない。
     また、東電も、自身の違法行為により、放射性物質という有害物質を住民の財産に付着させ、また住民を未知の放射線障害の危険にさらしているのだから、住民からの要請に応じて技術的に可能な限りの除染を行わなければならないものであり、この点について何ら対策を立てようとしない東電の対応は無責任であり。許しがたいと言わざるを得ない。
  3. 東京電力と国は損害の完全賠償をし、その費用は原発利益共同体が負担すること
     東電は、本件の重大な被害を出しながら、電気料金を値上げし、その負担を利用者国民に押し付けようとしている。電力会社は使用済み核燃料再処理等積立金などの積立金を約4兆8000億円を保有しており、原発からの撤退を目指す第一歩としても、被害回復と原発廃炉への費用にこれを利用するべきである。また、前述の通り、国は危険性を糊塗して国策として原子力発電を推進してきており、その責任は極めて大であって、完全賠償について責任を負うことは明らかである。さらに、今後の被災者の健康診断や生活環境の整備、廃炉に向けての対策費用などについては、原子力発電所の推進にかかわってきた、いわゆる原発村の住人である原子炉メーカーやゼネコンなどの利益共同体、推進に協力してきた学者・学会、安全性を喧伝してきたマスコミなどもそのための費用を負担するべきは当然である。
     今回明らかにされたように原発被害は時間的・空間的に広大な広がりを持ち、その被害を完全に賠償する、すなわち「事故以前の状態に戻す」ことを達成するためには、これまでの法律や制度の枠組みでは不十分と言わざるを得ない。国や東電らの加害責任を前提として、国民全体の英知を結集して被害の完全賠償と原状回復に努めるべきであり、そのために自由法曹団東京支部も全力で取り組む所存である。
2012年2月25日
自由法曹団東京支部第40回支部総会
 
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