自由法曹団 東京支部
 
 
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支部の意見書・声明[2011年]

都教委の教員処分に強く抗議し、すみやかな処分撤回を求める


  1.  本年3月30日、東京都教育委員会(都教委)は、本年の卒業式における「君が代」斉唱時の不起立・不伴奏などを理由に、6名の公立学校教員に処分を下した。
     2003年10月23日付通達(「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について」 いわゆる「10・23通達」)を発して以来、都教委は毎年、卒業式・入学式の「君が代」斉唱時の不起立者等に対して処分を続けてきた。そればかりか、処分者に対する「研修」の強要、定年後の再雇用拒否、再雇用職員・非常勤職員の合格取り消しなど数々の不当な扱いを続け、教育への介入、思想・信条の自由の侵害を繰り返してきた。
     こうした都教委の暴挙が行われるたびに、国民から強い批判が幅広くなされてきた。にもかかわらず、都教委は姿勢を改めることがないばかりか、今年もまた暴挙を繰り返し、その結果、10・23通達に基づく都教委による処分者は、延べ436名という膨大な数に及ぶこととなった。
  2.  「日の丸・君が代」については、それらが過去に果たした皇国思想・軍国主義思想の精神的支柱としての役割などから、現在でも国民間の評価が様々に分かれている。そのような「日の丸・君が代」について、壇上への掲揚や起立斉唱など、これに敬意を表し尊重する行為を、行政権力が教育の現場に一方的に強制することは憲法上許されないというべきである。
     本年3月10日、東京高裁第2民事部は、「・・・原告の不起立・不伴奏が真摯な動機による『やむにやまれぬ行動』」であると認め、不起立・不伴奏に対してなされた懲戒処分(減給、戒告)「は、社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を逸脱し、又はこれを濫用したものというべきである」と断じ、一審判決を覆して、都教委の処分を取り消す旨判決した。
     今回の処分は、こうした判決が出されたにもかかわらずその直後に行われたものである。
     都教委は、2006年9月、東京地方裁判所民事第36部において、10・23通達等が旧教育基本法10条・憲法19条違反に違反するとして、都立学校の教員らに、起立斉唱やピアノ伴奏をする義務がなく、これらの行為の拒否等を理由にいかなる不利益処分もしてはならないと判断された後も、「日の丸・君が代」の強制を全く改めず、不起立等を理由とする懲戒処分や、再雇用拒否、再発防止研修命令等を毎年繰り返してきた。このことと合わせて考えるならば、都教委の司法判断を軽視する態度は、ますます顕著になっていると言わざるを得ない。
     また、都教委が、このような「日の丸・君が代」の強制と合わせて、2006年4月13日に職員会議での挙手採択等を禁止した「学校運営の適正化通知」を発出しますます教師の自由を制限している態度に鑑みれば、この問題が、単に教育現場における管理強化に止まらず、教育における民主主義の破壊につながっていることは明白である。
  3.  私たち自由法曹団及び自由法曹団東京支部は、都教委の処分に強く抗議するとともに、10・23通達等を撤回して「日の丸・君が代」の強制をやめ、理不尽な懲戒処分・合格取消・採用拒否等を直ちに撤回するよう強く求める。

2011年4月6日

自由法曹団
 団長  菊池 紘
自由法曹団東京支部
 支部長 藤本 齊

 
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