自由法曹団 東京支部
 
 
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支部の意見書・声明[2011年]

国公法弾圧2事件の審理を大法廷に回付し猿払事件最高裁判決の判例変更並びにこれらの2事件の違憲無罪判決を速やかに言い渡すよう求める決議(案)

2011年2月26日

 1974年11月の猿払事件最高裁大法廷判決以来、30数年ぶりの起訴となった堀越明男さんに対する国公法弾圧堀越事件、宇治橋眞一さんに対する世田谷国公法弾圧事件、この国公法弾圧2事件は、それぞれ2006年、2008年と東京地裁で不当な有罪判決が出されていた。その後2事件とも控訴されて東京高裁に係属し、2010年3月、5月と控訴審判決が予定された。36年ぶりに猿払事件最高裁大法廷判決をくつがえす違憲判決が言い渡されるかどうか大いに注目されていたとことであった。
 2010年3月の堀越事件判決は、猿払事件最高裁判決を踏襲はするものの、本件公訴事実である堀越さんの職務と無関係な政党機関紙などの配布によっては、同法の「保護法益が損なわれる危険性を肯定することは常識的にみて全く困難」であって、これを処罰することは憲法21条1項・31条に違反する、との適用違憲そして逆転無罪判決となった。ところが引き続き5月に言い渡された世田谷事件では、猿払事件最高裁大法廷判決を踏襲するだけの、全く得るところのない不当判決となった。
 堀越事件控訴審では10回の公判を費やし10人の証人(うち8人は学者証人)の取り調べを行って、適用違憲の結論に至った。他方で世田谷事件控訴審では弁護側の申請証人全てを却下するなど、真理に目をふさいだ結果の不当判決であった。
 両事件は、上告され、最高裁第2小法廷に係属している。今、最高裁に期待される役割は、言い渡し後36年を経過する猿払事件最高裁大法廷判決の見直しである。
 猿払事件最高裁判決は言い渡し直後から憲法・行政法・刑事法などの学会・言論界から全く支持されることがなく、多くの批判的論考が発表され続けた。その結果堀越事件まで30年来、国公法違反・人事院規則違反での起訴が見送られてきた。
 堀越事件控訴審判決も指摘するところであるが、@わが国の国家公務員の政治的行為禁止規定は、禁止される行為が過度に広範であること、A諸外国と比べても広範でしかも違反に対する制裁に刑罰を科すという、他に例を見ない過剰な禁止規定となっていること、B禁止の反面で許容される行為や地方公務員の禁止規定との整合性など、法体系上も矛盾があること、C郵政民営化の論戦に見られるように、国会また国民・言論界の中でも、政治的行為の禁止規定が全く関心の外であったこと、D様々な分野、特に人権について国際化が進み、人権の国際標準の視点から改めてこの問題を考えるべきことなど、今や猿払事件最高裁大法廷判決を維持することはとうてい困難な情勢にある。
 国公法弾圧2事件を第2小法廷から大法廷に回付させ、大法廷において猿払事件最高裁判決を見直すこと、そして違憲無罪判決を速やかに言い渡すことこそが、今最高裁に課された使命である。自由法曹団東京支部は、最高裁がこの使命を果たさすことを強く要請し、決議する。

第39回自由法曹団東京支部総会

 
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