自由法曹団 東京支部
 
 
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労働者派遣法の抜本的改正を求める決議


 10年2月24日,厚生労働大臣の諮問機関である労働法制審議会は、労働者派遣法の改正案要綱について「おおむね妥当と認める」旨答申し、改正法案は3月上旬にも国会に提出される見通しにある。「派遣切り」「派遣村」によって派遣労働者の雇用の不安定と劣悪な労働条件が可視化された以上,労働者保護のため実効性ある労働者派遣法の抜本的改正が一刻も早く実現されなければならない。09年12月18日の松下PDP事件最高裁判決をはじめ,裁判所はこの間労働者を救済することなく派遣先を免罪する不当かつ反動的な判決を繰り返しており,司法が労働者を救済しない以上,立法の出番でもある。しかし,労働者派遣法の改正案要綱は09年12月28日の労政審答申に沿った内容で規制強化の方向性を打ち出しており,その点は評価できるものの,問題点も多く労働者保護にはきわめて不十分である。
 まず,登録型派遣を原則禁止としつつ,専門26業務等は例外としている。しかし,専門26業務には現在専門性が疑わしい業務も含まれており,仮に例外とするとしても範囲を厳しく限定すべきである。また,常用雇用の定義も曖昧なまま常用型派遣を製造業務を含め無制限に認めている。しかし,雇用の安定を図るためには常用雇用は期間の定めのない雇用とし,製造業務派遣は全面禁止すべきである。日雇い派遣についても原則禁止にとどまらず全面禁止すべきことはいうまでもない。さらに,「均衡処遇」原則の採用にとどまっているが,三党合意にも明記された「均等待遇」原則を採用すべきである。違法派遣の場合の直接雇用みなし制度については,適用のある違法派遣を4つの場合に限定し,派遣先の故意又は過失という主観的要件を課した上,直接雇用の場合の労働契約は派遣元における労働条件と同一としている。しかし,労働者保護の見地からは違法派遣の場合を限定したり主観的要件を課したりする理由はない。また,直接雇用の場合の労働契約が派遣元における労働条件と同一とすれば,通常は派遣元の労働契約は有期契約であるから短期の雇い止めを許すことになる。直接雇用違反に対する刑罰の制裁も必要である。さらに,施行日を3年後ないし5年後にして規制を先延ばしすることは論外である。そして,常用型派遣についての事前面接等の特定行為の容認と専門業務に従事する常用型派遣についての雇用申込義務の撤廃があるが,特定行為の容認は派遣先による派遣労働者の恣意的な差別,選別を許し,雇用申込義務の撤廃は常用雇用代替を許すことになり,いずれも労働者派遣法の最低限の原則を否定するものであって,許されない規制緩和策である。
 本来,労働者派遣法は,直接雇用の原則に対する例外である労働者派遣を厳しく制限すべきであり,一時的臨時的業務に対する派遣だけが認められて派遣労働者には均等待遇が実現され,かつ,違法派遣がなされた場合には期間の定めのない直接雇用が擬制される制度を含む内容とすべきである。
 自由法曹団東京支部は,労働者保護のため実効性ある労働者派遣法の抜本的改正を強く求めるものである。

2010年2月27日  自由法曹団東京支部第38回支部総会
執行先 内閣総理大臣、国会各政党、マスコミ関係、東京都知事、都議会各政党

 
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