自由法曹団 東京支部
 
 
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団支部の活動紹介

五輪招致問題

426号より 
IOC評価委員との面会を実現! 「異議あり!2016石原オリンピック」シンポ大成功

高石 育子 東京第一法律事務所

1 実行委員会の結成

 団東京支部が東京都スポーツ振興基本計画に対するパブリックコメントを発表したことをきっかけに、東京支部執行部(小部正治前幹事長、大崎潤一前事務局長、そして事務局次長の高石)は、昨年夏から、新日本スポーツ連盟東京都連盟(「新スポ連」)との間で、都政のスポーツ振興と東京オリンピック招致について意見交換をするようになった。
 そして、友好団体に呼びかけ、東京地評、革新都政をつくる会、東京革新懇、新婦人、臨海都民連、東京自治労連等が参加して、意見交換会を重ねた。
 それぞれの団体の立場から、オリンピック招致に対する意見は様々なものがあり、一つの意見に集約はできないが、「オリンピック運動の立場には賛成するが、今回の東京オリンピック招致については異議がある。」ということまでは一致し、そのスタンスで、各団体の合わさった実行委員会をつくり、今回の招致計画を検証しようという試みでシンポジウムを行うことを決めた。

2 シンポジウムの方向性

 強調したい点は、「オリンピック=悪者、ではない」という基本的スタンスである。
我々は、オリンピック運動の趣旨には大いに賛成している。オリンピックそのものに真っ向から反対しているのではない。むしろ、純粋にオリンピックが与える感動や希望という積極的役割は大いに賛成しているし、期待もしている。
 しかし、現在の招致計画は、オリンピックが持つ大きなプラスのイメージを利用して、都民をごまかすような計画となっているのはないか、それをシンポジウムで様々な角度から議論・検証しよう、というのがシンポジウム開催の趣旨となった。
 シンポの名称は「異議あり!2016石原オリンピック」とし、シンポ開催日は、IOC評価委員の東京視察来日初日の平成21年4月14日とした。
 シンポに先立ち、IOCの本部の委員に対して、シンポのご案内と招待のFAXを英文と仏文(!)で送った。シンポ後のジャパニーズスタイルバーでの懇親会にも誘った。これが4月19日のIOCとの面会につながったのである。これらの英文、仏文FAXの作成には東京支部事務局の奥住さんの尽力によるところが大きい。
シンポの1週間前まで参加者人数は予想できず、50名来てくれればよし、100名来たら大成功だよ、と言っていた。
 ところが、シンポの3日前に、IOC評価委員がシカゴ視察にあたり反対派からも意見を聞いたため東京でも反対派から意見聴取をする予定、という新聞報道がされたことをきっかけに、突然、マスコミが私たち実行委員会に注目するようになった。

4 4.14シンポ

 シンポ当日の朝には、マスコミの単独インタビューを受けた。その夜のシンポには、マスコミも、報道テレビ複数社、新聞複数社が押しかけた。
 肝心のシンポ参加者はなんと150名超! 150部用意していた配布資料も売り切れ御免のうれしい悲鳴。
 シンポの内容も、とても中身の濃いものであった。経済効果の点について金子貞吉中央大学名誉教授から、現時点での資料を基に2016年の経済効果を算出しており全面的に依拠できないこと、経済効果を事後的に検証が出来ないこと、オリンピック後の施設維持費は全く計算に入れていないことから、都がアピールしている経済効果ははなはだ疑問であること等が報告された。都政の面からは、松村友昭日本共産党都議会議員から、「コンパクトでお金がかからない東京の計画」はごまかしであり、4候補都市中、施設整備費は東京がもっとも高額であること、オリンピックを口実にしたインフラ整備に別途9兆円をつぎ込む計画であること等の問題点が報告された。オリンピック運動の側面からは、和食昭夫新スポ連理事長から、石原都政になってスポーツ振興予算は以前の3割まで削減され、スポーツ振興行政を後退させ、招致を機にさらにゆがめていることはオリンピック運動の趣旨に反すること、遊泳禁止のお台場で10キロ水泳の競技を行う(!)、既存の施設の横に新規施設を新設していながら「既存施設を利用」と表現するなどごまかしや無理がある開催計画であること、石原都知事の政治姿勢は、いかなる差別をも認めないオリンピック運動と相容れないことなどが報告された。
 参加者からは、「今回の招致に異議を唱える理由がよく分かった」などの感想が多くよせられ、シンポは大成功を収めた。

4 4.17アピール行動

 さらに、私たちシンポ実行委員会は、IOC評価委員がメインスタジアム予定地を視察する4月17日に、「2016BID Objection! 異議あり!」と書いたオレンジ色のプラカードを掲げて静かに結集した。特に拡声器で呼びかける等はしなかったが、Objection!を持つ人たちが存在する事実は東京都にも評価委員にも印象に残ったと思う。その証拠に、都招致委員会側は、私たちの前にあえてバスを止め、IOC評価委員から私たちを隠したのである(!)。私たちが場所を移動すると、また別のバスが動いて私たちを隠した。仕方ないから私たちも再度移動する。そんなことが繰り返された。

5 IOC評価委員との面会そして記者会見

  その翌日18日(土)の朝、都招致委員会から、IOCが19日に面会したいという連絡が入ったのである。新スポ連を中心に、大急ぎでIOCへの発言内容を検討し、通訳を手配した。
 面会は通訳込みで2名のみ、という制約があったので、私は、面会するホテルの部屋の前まで待っていた。評価委員はとてもフレンドリーな雰囲気で、こちらが用意した資料など積極的に受け取っていたが、この場は協議交渉の場ではないので話を聞くだけで回答はしないということであった。しかし、私たちの意見を直接IOC側に伝えられたのは大きな成果となった。
 IOCとの面会後、直ちに記者会見が行われた。集まったマスコミは10数社。ただちにテレビでも報道された。私たちはなぜ今回の招致計画に反対なのかを正確に伝えるよう細心の注意を計ったが、果たしてそれが正確に伝わったかは定かではない。実際に一部報道では「オリンピック=悪者。だから反対」という誤った報道のされ方もあった。

6 今後の活動

 開催地決定は今年10月であり、シンポ実行委員会は、連絡会に形を変え、活動を継続していくことになった。
まずは、我々のスタンスに賛同してくれる団体を増やすため、我々の趣旨を正確に説明する冊子を団体向けにつくることになった。
 また、IOC本部やIOC委員に対しては、私たちの意見FAXを送ることになった。

 今後も10月に向けて、活動を続けていく予定である。

 
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