五輪招致問題
2016年東京オリンピック開催計画及び招致活動に対する検証を求める決議
石原都政は,16年オリンピックを東京に招致する活動を展開した。
そもそもオリンピックは,スポーツを通じて平和,民主主義,人権尊重の精神を培うというオリンピズムの精神を実現する世界的な運動である。ところが,東京都のオリンピック開催計画と招致活動は,オリンピズムの精神に立脚しているとは到底いえないものであった。
開催計画の観点
@ 開催理念の不当性
開催の理念,動機として掲げたものは「都市の再生」であった。オリンピック招致を口実に,都民から反対の声が強い三環状道路の整備,築地市場移転等の都市再開発を一気に進めるという意図が明らかであった。
A 貧困なスポーツ行政
石原都政となった99年度以後5年間で,都のスポーツ関連予算は段階的に約7割も削減され,都のスポーツ施設数は全国で最低レベルとなり,現都政がスポーツの発展に重きを置いていないことが端的に表れていた。
B 欺瞞的な施設整備計画と高額な整備費
施設整備計画自体も,「半径8q圏内」のコンパクトな五輪を謳った結果,水質基準をクリアしていない海域を会場にしていること,中央区晴海に新設するメインスタジアムの建設費は900億円以上である上,交通輸送や災害時の安全面に問題がある立地であること,「半径8q圏」外の駒沢オリンピック公園総合運動場を利用しないこと,「既存会場」とされているが実際は新設である会場が複数あること,スポーツ施設の整備を怠ってきた結果,競技施設等整備費は4候補都市中最高額(4000億円超)であるなどの重大な問題があった。ところが,都は「環境五輪」「70%は既存会場を活用」とアピールし,費用を抑えたかのような虚偽の宣伝を行っており,欺瞞的な計画と言わざるを得ない。
招致活動の観点
@ 招致賛成率の低さ
民意を十分斟酌せずに開催計画が決定された結果,オリンピック招致に対する賛成は50%台であり,他の候補都市中最低であった。
A 多額の招致活動経費
招致活動経費は,公表されただけでも3年間で150億円もの巨費が投じられた。
16年東京オリンピック招致は失敗に終わったが,すでに石原都知事は20年の立候補の可能性に言及している。しかし石原都政は16年の招致活動経費150億円の監査及び開催計画・招致活動の反省と見直しを第一に行うべきである。それなくしての再立候補は市民の賛成を得られず,許されるものではない。よって,自由法曹団東京支部は,東京都に対し,真に市民が望むオリンピック実現のために, 16年オリンピック招致の開催計画と招致活動の検証を求めるものである。
2010年2月27日 自由法曹団東京支部第38回支部総会
執行先 内閣総理大臣、国会各政党、マスコミ関係、東京都知事、都議会各政党