自由法曹団 東京支部
 
 
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憲法・平和

「国会改革」と衆議院比例定数削減に反対する決議


 民主党は、2010年1月8日、与野党国会対策委員長会談の場で、与党3党が合意した「国会改革」案の骨子を示した。政府参考人制度を廃止して官僚答弁を禁止するほか、内閣法制局長官を「政府特別補佐人」から除外するのが主な内容である。
 1999年に成立した国会審議活性化法により、既に国会における官僚答弁は原則禁止されることになったが、政府参考人制度を廃止することは、国会の審議の場から官僚が完全に排除されることを意味する。しかしこれでは、国会の審議の場において行政の実態に精通している官僚に対して、国会議員が質問・追求することができなくなり、国権の最高機関である国会の行政権監視機能が大幅に制限される。
 内閣法制局は、「閣議に附される法律案、政令案、条例案を審査し、それに意見を附し、及び所要の修正を加えて、内閣に上申すること」を職責としている。法律案などと憲法との整合性や憲法解釈の統一性を図る目的である。例えば同法制局は、憲法9条の解釈について、これまで@「武力行使」の禁止、A「武力行使と一体となった活動」の禁止、B「集団的自衛権行使」の禁止、等の解釈を維持してきた。内閣法制局は限界がありながらも、こうした解釈を維持することで、憲法9条の解釈改憲に一定の歯止めとなってきた。しかし同法制局長官の国会での答弁が排除されることになれば、同法制局がこれまでのような職責を果たすことは不可能となる。時々の政府は、こうした憲法解釈を採用するかどうかは「内閣が責任」をもって決められると解釈されかねない。
 与党3党が合意した「国会改革」案の骨子には入らなかったが、@政党の政策協議機関の廃止、A議員立法の制限、B委員会質問の制限、C請願(陳情)受理の制限を行い、「政府・与党一元化」を狙っている。これらは、政党の上層部だけで決めたことを、国会の意思決定過程を単純化し、スピーディな決定と執行を可能としようとするものである。つまり、これは内閣総理大臣(政権党上層部)の国会支配に結びつく。結果、国会は論議の場ではなくなり、内閣総理大臣(政権党)の政策を追認する場となる。さらにこれを押し詰めると、選挙そのものも、「政権選択」であり「次の首相」を決める、という観点に矮小化されてしまい、国民の多様な意思を反映した代表者を選出し、多様な意思を国会に反映する、という議会制民主主義に反する事態となる。これは選挙制度においては単純小選挙区制に結びつく。民主党がマニフェストでいう衆議院比例定数削減はこうした文脈でとらえるべきである。
 民主党の狙う「国会改革」と衆議院比例定数削減は、少数政党を国会から排除し、国会を悪法の「自動製造機関」とし、さらには憲法改悪まで見通すもので、絶対に許すことはできない。自由法曹団東京支部は、民主党のこうした狙いを阻止すべく全力を尽くすものである。

2010年2月27日  自由法曹団東京支部第38回支部総会
執行先 内閣総理大臣、国会各政党、マスコミ関係、東京都知事、都議会各政党

 
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