自由法曹団 東京支部
 
 
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治安・警察

ネットカフェ規制条例の撤回・廃案を求める決議


 東京都議会第1定例会(3月都議会 2月24日開会)に、ネットカフェ規制条例案が提出されている(インターネット端末利用営業の規制に関する条例 東京都公安委員会提出)。ネット犯罪などの防止と摘発を理由に、ネットカフェを警察の管理のもとにおこうとするものである。
 この条例は、自由や人権と抵触する重大な問題をはらんでいる。
 第1に、ネットカフェは警察への届出制とされ、営業停止や刑罰の強制のもとで利用者の本人確認などを義務づけられる。ネット通信の「匿名性」を剥奪することが目的だから、端末に関わる事項が届出の対象とされ、端末利用の記録が義務づけられることになる。ネットカフェが通信システムごと警察の管理下に入ることになり、謙抑的であるべき行政警察権が著しく拡大されることになる。
 第2に、本人確認義務により、利用者は運転免許証などの提示を要求され、提示しなければ利用できないことになる。仕事や住居を失ってネットカフェを寄る辺としているいわゆる「ネットカフェ難民」には、身分証明書を提示できない者も多い。「ネットカフェ難民」などは、ネットカフェからも放逐されることになる。
 第3に、本人確認記録と通信端末特定記録等が作成・保存される。ネット犯罪が発生した際の「逆探知」が目的だから、「いつ、だれが、どの端末を利用したか」だけでなく「どのように通信システムにアクセスしたか」に及ぶ可能性がおおきい。プライバシーや通信の秘密にかかわる情報であるが、漏洩防止にはいかなる措置も講じられていない。  第4に、警察には、資料提出要求権や立入・検査権が認められ、拒否すれば犯罪とされる。「条例の施行に必要とされる限度」という抽象的な理由で、本人確認記録や通信端末特定記録等が開示されるなら、個人情報保護の理念や憲法上の人権であるプライバシー、通信の秘密と真っ向から抵触することになる。
 ネット犯罪等の防止や摘発は必要であるが、そのために店舗や利用者の自由が過度に制約されてはならず、ましてや憲法上の人権が侵害されてはならない。犯罪防止に必要なのは、犯罪を生まない社会の生成であって、市民社会を圧迫する行政警察権の拡大ではない。警視庁が行ったパブリックコメントでも、個人情報の保護を求める意見や「ネットカフェ難民」の放逐を懸念する声が、本人確認義務を求める声をうわまわっている。
 東京都内の弁護士で構成する自由法曹団東京支部は、東京都公安委員会にネットカフェ規制条例案の撤回を求めるとともに、撤回されない場合には東京都議会の審議によって廃案にするよう求めるものである。

2010年2月27日  自由法曹団東京支部第38回支部総会
執行先 マスコミ関係、東京都知事、都議会各政党

 
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