自由法曹団 東京支部
 
 
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団支部の活動紹介

自由法曹団員と弁護士会活動

東京法律事務所 永盛 敦郎

  1. はじめに
     大学の時に自由法曹団を知って弁護士を目指した私ですが、1992年から2年間、幹事長を務めたくらいで、実は団で活動することは多くはありませんでした。当初は総評弁護団(現労働弁護団)事務局、次に、日弁連刑法「改正」阻止実行委員会事務局長、二弁副会長、法律扶助協会専務理事、法テラス東京事務所所長と、主に弁護士会に関連する役職を歩んできました。
     今回、団支部から「若手弁護士に伝えたいこと」の原稿依頼を受けて、団員から見た弁護士会活動について、書いてみようと思います。
  2. 弁護士会の特質と活動の広がり
     団と異なる弁護士会の最大の特徴は、あらゆる思想信条の人々が参加する強制加入団体であるということです。同時に弁護士法は、「基本的人権の擁護と社会正義の実現」を弁護士の使命としています。
     若い団員の皆さんは、それぞれに取り組んでいる人権や民主主義の課題を持っていると思います。そのほとんどは、弁護士会の各種委員会でも取り上げて活動しています。かって弁護士会は「声明はすれど活動せず」などといわれた時代がありましたが、今では社会に向けても活発な働きかけをしているところがほとんどです。そのような中で、皆さんが誠実に活動すれば、間違いなく共感を広げ、他の法律家団体では得られない影響力を発揮することができるでしょう。
  3. 一致点とお互いの尊重
     注意しなくてはならないのは、弁護士会で活動する際、「一致点を大切にし、相違点は尊重する」態度が必要だということです。
     日弁連刑法委員会の中心的メンバーの一人であった、一弁の原秀男先生は、戦前、陸軍法務官として軍法会議を行っていた経歴を持つ方で、昭和天皇をこよなく尊敬しておられました。法務省との意見交換会の対策を討議していた会議の場で、原先生がおずおずと「実は私は園遊会に招かれておりまして、その日が意見交換会とぶつかってしまったのですが」と切り出しました。その場にいた全員が先生の気持ちを察し、「是非、園遊会に行ってください。意見交換会は私たちで何とかしますから」と述べて、送り出したことがありました。このようなお互いの配慮の中で、刑法委員会は、右から左まで多様な考えを持つ人々が固く団結し、法制審議会が答申した「改正刑法草案」に基づく刑法「改正」を阻止するという成果を上げたのです。
  4. 異なる立場の人々の共同
     今、戦争法案阻止のたたかいの上で、強制加盟の公的団体としての弁護士会が世論形成にはたしている役割はきわめて大きいものがあります。
     弁護士会の中で、憲法9条の理解については、さまざまな見解があります。皆さんの中では、自衛隊そのものが違憲だという考え方が多いでしょうが、弁護士会全体ではそうではありません。このような状況下で、弁護士会としてどこに一致点を求めるかということが何より重要です。
     現在の弁護士会の戦争法案反対運動の最大の立脚点は、これが立憲主義に反するということです。憲法は権力を縛るものであるのに、解釈の変更によってこの縛りを解こうとすることは、法律家であるならば到底容認できることではありません。
     不一致点については留保しつつ、一致点に基づいて行動する、これは弁護士会に限らず、あらゆる統一戦線的運動の基本であり、是非このような経験を積み重ねていただきたいと思います。
  5. おわりに
     運動を語る場合、よく「○○を巻き込んで」等といわれることがありますが、私は決して使いません。この言葉の中には自分たちが進んでいて、それ以外の人々は遅れている、というニュアンスがあります。
     他者の意見に謙虚に耳を傾けたうえで、自分の中で反芻し、その上で自分の見解を組み立ててゆくという謙虚な姿勢が、お互いの議論をより高いものに発展させる力となると考えています。
     それにしても、我が国のトップに立つ人にはこの姿勢が皆無なのは残念なことですね。
 
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