自由法曹団 東京支部
 
 
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団支部の活動紹介

若手弁護士へのメッセージ

新宿法律会計事務所 南元 昭雄


  1. はじめに
     私は、昭和43年4月弁護士登録。平成23年6月以降療養のため事件受任停止中。
     私は、小学3年の12月8日、日本が米・英と開戦、旧制中学1年の昭和20年8月15日、日本敗戦により終戦。その間、徹底した皇国史観による軍国主義教育(例えば、中学入学始めから軍人勅諭暗記暗唱を強要される学習!)、「鬼畜米英」宣伝。それが、終戦後数年間は食糧不足による飢餓生活を、そのうえ終戦後は国家統制主義から民主主義体制へと180度転換し、生きる目標が俄かに定まらない状態だった。
     この幼少時代の「戦争の惨禍」、特に国家統制による「教育の惨禍」を受けた想いは痛恨の極みで、これが弁護士就業以来、恩師亡渡邉良夫弁護士の薫陶を受けた影響もあり、微力ながら憲法9条事件・平和的生存権擁護・権力による教育統制反対事件・安全に教育を受ける権利擁護・労働災害損害賠償請求事件等の憲法裁判活動に参加することを弁護士活動の指針として来た。
  2. 担当した代表的事件と問題点
     私が担当した代表的な事案は、「百里自衛隊航空基地違憲」・「家永教科書検定違憲」の各訴訟。「日本鋼管労働災害損害賠償訴訟」等多数の労働災害事件、特に教科書訴訟の経験を生かし、心血を注いだのは「私立山形高校体操部活中吊り環着地失敗事故損害賠償訴訟」・「北見養護学校作業授業中一眼失明事故損害賠償訴訟」等の多数の学校災害事件。そして数多くの「対消費者高利金融被害救済訴訟」をも担当してきた。しかし、憲法第9条事案については、「砂川最高裁判決」の域を打破していないし、労働災害訴訟では「安全に労働する権利」→「労働契約上の使用者の安全保証債務」論を、学校災害訴訟では「安全に教育を受ける権利」→「在学契約上の学校設置者の安全保証債務」論を夫々提唱したが、何れも市民法的民事損害賠償請求の域を出ず、「憲法上の請求権」とまでは確立していない。これは、憲法理論と民事賠償法理論との結合には、憲法法規から直ちに具体的請求権を導けないとする従来からの訴訟法理論が壁になっており、今後克服すべき問題が残っている。
  3. 「若手」への期待
     現在、安倍独裁政権の憲法体制無視・破壊の統治手法は、これを放置出来ない段階に来ている。
     その最たるものは「積極的平和主義」の美名の下に、内閣の解釈で憲法を改定し(憲法第96条違反)、「集団的自衛権による武力行使」を容認し、これに派生して自衛隊の軍備を増強し、地域無制限の海外派兵(外国の戦争支援を含む)を可能にし、自衛隊を殺人(=殺される)集団にし、また「米軍辺野古基地移転強行」など、一連の曖昧用語による安保法制を画策し、これに対する国民の追求を逃れんとして、「特定秘密保護法」を制定・施行し、国民の知る権利・報道の自由などを抑圧せんとしている。その他、「原発再稼働促進」・大企業の利益優先と言う格差拡大の経済政策など安倍政権の憲法体制破壊政策は、如何に「戦争の惨禍」の体験がない政治集団の政策であるとしても、許容範囲を超えるものである。
     そこで、「若手」諸君に、国民、特に子どもたちの将来において「戦争の惨禍」を経験させず、人類普遍の原理である「平和で安全に生存する権利」を守るため、主導的活動が期待されていることを肝に銘じ、これまで先駆者が築いてきた憲法理論・災害救済理論の不足を補い発展させ、憲法理念実現のための弁護士活動をして呉れることを期待するものです。
 
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