自由法曹団 東京支部
 
 
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団支部の活動紹介

地域に根差し、暮らしに寄り添って、45年

ひめしゃら法律事務所 杉井 静子


 私が弁護士登録したのは1969年(21期)。今年で団員としても45年になります。多摩地域で初の民主的地域事務所である三多摩法律事務所に31年間所属し、その後杉井法律事務所を経て、ひめしゃら法律事務所を開設し丸5年になります。自分が育ち生活している多摩の地域にこだわり続けたと言えるでしょうか。
 弁護士になりたての頃は、まだ女性弁護士が少ない時代で、「あんた本当に弁護士か!」と言われたり、「女では頼りないから男の弁護士に代えてくれ」と言われ、悔しい思いもしました。結婚して子どもを産んで子育てする時期は活動が制約され、「子どもなんか産まなきゃよかった…」と嘆き、あせったこともありました。
 しかし、ある男性の先輩団員からの、「杉井さんは産休をとる度に元気になるね」の一言で考えが変わりました。産休(私の場合は3度)はデメリットではなくて、貴重な充電期間であり、メリットだったのだ!と。そして、子育て中は「あせらない」「細くても長く仕事を続ける」ことをモットーにやってきました。
 三多摩法律事務所に所属していた時期は、運営委員や運営委員会議長などもしましたがこれは得がたい経験でした。大所帯の事務所をまとめ、運営をしていくには、個々の事件処理とは別の能力と力量が要求されます。個人事務所からみると、会議にとられる時間がムダに思えますが、民主的討議の重要性と会議の中で重要な発言をし、集団を牽引していく力は、弁護士会活動や民主団体での活動でも重要です。私は平成2年度の二弁の副会長、平成17年度の関東弁護士会連合会の理事長(いずれも女性で初)をつとめましたが、三多摩法律事務所での経験は大変役立ちました。悪法、たとえば国家秘密法反対の三多摩大集会を何度も呼びかけ実行しました。また、「三多摩憲法のつどい」を提唱し、今でも毎年引きつづき開催されているのは本当に嬉しい限りです。
 もう一つ別のスタンスは、現行の法律や判例を既定のものとしてあきらめないことです。勿論、個々の事件で法律や判例を駆使し、あるいは違憲論を展開し、新判例をつくる活動は弁護士にとって最も大事なことです。しかし、若いみなさんには、現行の法律が悪法であればそれを廃止、改正する、場合によっては新しい法律をつくる、そのための研究をし、提言することにもチャレンジしていただきたい。
 10年先、20年先を見据えた活動をしてほしいと思います。
 私は、大事件を手がけ判例集に載るような判決を勝ちとった経験はない町の弁護士にすぎませんが、新しい立法の契機になるような活動にいくつかかかわってきました。
 1989年に二弁でセクハラ110番を実施し、その後セクハラ防止法案大綱の提言にかかわってきましたが、労働省(当時)はセクハラなんて実態があるかどうかわからないと見向きもしませんでした。
 しかし10年度の均等法改正でセクハラ防止は事業主の責任との規定が盛り込まれたのには、心底感激しました。また、日弁連の「親権と子どもの人権に関する小委員会」の委員長当時、「親権の一時停止」の提案を含む報告書をまとめましたが、これも2011年の民法改正で実現しました。最近では日弁連推薦委員として法制審議会で家事事件手続法の立法作業にもかかわりましたが、そこで弁護士会側が強く主張した「子どもの手続代理人」が実現しました。昔からの私の夢であった「子ども代理人制度」に比べるとまだまだ不十分なものですが、一部でも実現した意義は大きいと思っています。
 ところで、私は今でも日々の相談、事件に忙殺されている“現役弁護士”です。最近の相談や事件で感じることは、貧困化がかつてないほど広く深くなっていることです。そして、それもあって、精神を病んでいる人が実に多いことです。昔に比べ、「良きカウンセラーであること」が弁護士の役割の一つに加わっているのを実感します。ただ、弁護士はカウンセリングで終わらない、事件を解決しなければならない、その点で昔よりずっと「難しい仕事」になっていると思うのです。悩みの多い日々が続くのは年配者でも同じです。ご一緒に頑張りましょう。

 
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