自由法曹団 東京支部
 
 
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若手弁護士へのメッセージ

クラマエ法律事務所 倉内 節子


 司法修習終了間際まで私の法曹としての進路は決めかねていました。裁判官志望を捨て難く迷いに迷っていたのです。しかし、修習中、18期の仲間の誘いで争議団との交流や憲法学習会に参加するようになり、弁護士志望を固めました。このような経験を通じて、当時「労弁」(いわゆる労働者の側に立った弁護士)といわれていた弁護士になろうと決意して、黒田法律事務所(現東京法律事務所)に入所させていただきました。
 入所早々、小選挙区制導入反対運動の高まりの中で、学習会に飛び回ることになりました。民主的な選挙制度と全く相反することは導入後の状況が裏付けています。入所後、労働組合活動を理由とする解雇事件、思想差別による看護婦採用拒否事件、パートタイマーの解雇事件など目の回るような弁護活動に明け暮れました。
 女性差別事件で忘れられないたたかいがありました。丸の内オフィス街で働く女性が会社の就業規則で女子は30歳定年制が定められており、30歳の誕生日をもって退職(解雇)になった事件です。裁判まで持ち込むことなく「女子のみ30歳定年制は女性差別であり、働く権利の侵害として、このような制度は撤廃すべき」という多くの労働者の支持のもと、ついに会社に就業規則のこの条項を撤廃させました。丸の内のオフィス街に多くの労働者がビラ配布などで会社を包囲し、勝利したのです。
 刑事弾圧事件でも忘れられない弁護活動がありました。総理府統計局事件です。3名の女子職員が組合発行の社共両党の都議会議員選挙の立候補者推薦ニュースを門前で出勤してくる職員に配布したことが公職選挙法違反として逮捕、勾留されたのです。ひどいことに公判請求では国家公務員の政治活動を禁止している国公法違反の罪名がつけられたのです。この事件は、高裁では無罪を勝ち取ったものの、昭和49年11月6日、最高裁大法廷で罰金1万円の有罪となりました。猿払、徳島郵便局、統計局の3事件がいずれも有罪となったのです。最近、同じような弾圧事件があり、一定の成果を勝ち取っていることは、周知のことです。民主主義の根幹をなす政治活動の自由を高く掲げ、母として、妻として、女性労働者として10年に近い裁判闘争を闘った3名の女性を守る会の活動は民主主義発展のための貴重な礎となったと確信しています。この事件については、筆者の「戦後労働争議と権利闘争」総評弁護団、下巻717頁で紹介しています。
 私は、「講演活動ノート」を作っていますが、それを読み返すと、その時々の情勢に力を入れるテーマがわかります。労働問題や差別撤廃条約などはもちろんのこと、国家機密法のテーマの学習会はずいぶん行いました。平和や民主主義に機敏に反応する多くの人たちによって、私も鍛えられたと思います。なお、お世話になった東京法律事務所から船橋市内に民主的な事務所をつくろうという思いで独立しました。この地域においても、平和、民主主義にかかわる全国的な課題を積極的に取り組み、学習会、街頭宣伝、ビラ配布などに力を入れてきました。
 私は、結婚、出産と仕事との両立はとても核家族では困難でしたので、両親など身内の援助にずいぶん助けられてきました。私は、一般民事事件など多種多様な案件を数多く手掛けていますが、何よりも一つ一つの仕事をきちんと解決する地道な努力が弁護士としてのバックボーンになっていると自負しています。このようなスタイルを一貫して堅持してきたことにより、多くの人たちと人間的信頼や絆ができ、現在も沢山の刺激を受けることができています。

 
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