自由法曹団 東京支部
 
 
トップページ 先輩方のメッセージ

団支部の活動紹介

若手弁護士へのメッセージ

あかしあ法律法律事務所 平山 知子


 私は、1966年4月に26歳で松本善明法律事務所(現代々木総合)に入所した18期生です。
 私は、今でこそ、家庭事件をたくさんやっていますが、当時からそうだったわけではありません。
 入所した4月は春闘の時期。当時春闘では必ず刑事弾圧がありましたので、弁護士になった初日の仕事が、逮捕された国鉄労働者との接見。警察への抗議行動、勾留理由開示公判など、まず刑事弁護人としての基本を学ぶ日々です。
 次は労働事件。ちょうど日産とプリンスが合併したときでした。それまで全金プリンス労働組合がきちんと組織された労組として頑張っていたので、日産と合併を機に徹底的に労働組合の解体をはかる暴力的な攻撃が始まりました。連日のように現場に駆けつけ、暴力を受けている労働者の救出、会社への抗議、そして聞き取り・打ち合わせ、裁判所への仮処分の申請と、めまぐるしい活動でした。
 殆ど同時並行的に発生した、中国の文化大革命の毛沢東一派の「紅衛兵」による、日中友好協会本部襲撃事件についても、連日現場へ駆けつける救援活動、証拠保全活動、そして相次ぐ仮処分申請・・。
 1968年初頭からは東大闘争が始まり、民主化闘争弁護団として、東大闘争の現場の渦中に夜昼なく常駐する・・というような活動。しかも弁護士になると同時に結婚していましたので、まあ家庭生活も営みながら(といえるかどうか、はなはだ疑問)でした。
 こうした激しく動く弁護団活動の合間に一般市民事件・家事事件なども、先輩弁護士のやり方を見よう見まねで学んでいったのです。先輩弁護士から教えて頂いたことは、「徹底的な現場主義」「自覚的な労働者から学べ」ということでした。
 私の弁護士活動が一変するのは、子どもが生まれてから。しかも次々と3人の子どもの母親になってしまったのですから、これまでの弁護士活動とのギャップに悩み苦しむ日々でもありました。しかし私は、子どもを産み育てたことで仕事のスタイルを変え、依頼者の気持ちへ共感することを学び、職種の違う働く女性たちと仲良くなり、苦楽をともにする喜びを知り、それからの弁護士活動への大きな糧となりました。それが、やがて家庭事件を多く扱うようになることにつながったと思っています。
 ところで、私が参加した弁護団活動はどれ一つもマスコミに載るようなものはありませんでした。東大闘争もマスコミに載るのは華々しい「全共闘」の方だけ。
 刑事事件もそうです。警察段階で自白調書を取られてしまっていたケースで、公判廷でこれをひっくり返し、完全無罪判決を勝ち取ったものも含めて、検察が控訴できず1審で無罪が確定した事件も3件経験しました。でも、マスコミに載るような大きな事件でもなく、市井の市民が誰でも陥れられそうな事案でした。
 団の弁護士は、国家権力や大企業とは一歩も引かず闘いぬくという気概は必要です。でも、私は、家庭事件を多く手がけるようになり、夫婦や親子という特別な人間関係の中では、弁護士が、その人たちにとって「より良い解決」を目指すために、その人たちと手を携えて一緒に全力を挙げて努力することが、大切な役割であると思うようになりました。根本的な解決の多くは、社会の矛盾や政治のあり方と無関係ではないということも、その人たちと、ともに気づき考えて行くことが大切です。そうですね、私は「町弁」に徹してきたと思います。
 私自身が作ってきた歩みは、ほんとうに小さなものですが、振り返ってみると、一貫して憲法を守り活かすことが原点でした。前文、9条はもちろんですが、家庭事件では、13条、24条、25条は、まさによりどころです。現在の安部政権の壊憲策動は絶対に許せません。私に残された時間は少ないことを自覚しつつも、まだ現役で、事務所内ではありますが、若手の皆さんと一緒に仕事ができる幸せを感じながら、もう少し頑張りたいと思っています。

 
自由法曹団東京支部 〒112-0014 東京都文京区関口一丁目8-6 メゾン文京関口U202号 TEL:03-5227-8255 FAX:03-5227-8257